第三章
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「使わせてもらっているよ」
「服もですね」
「うん、そうしてるよ」
「どうも変な服ばかりですか」
「変な服じゃないよ」
王は微笑み侍従に答える。答えながら自分で着替えている。この時も周りの者達に手伝わさせることはない。
「全くね」
「そうですか」
「うん、折角皆が贈ってくれたものなのに」
その好意を受ける、受けるからこそだというのだ。
「使わせてもらうよ」
「左様ですか」
「そうだよ、だからね」
今もその服を着ていた、普段着と言っていい服だがやはりセンスがない。小柄な王が着ると子供服にすら見える。
「これでいいんだよ」
「陛下がそう仰るならいいですが」
「折角の好意を無下にするのはね」
自身の国民達のそれをだというのだ。
「よくないよ」
「だからですか」
「使わせてもらうよ」
こう言ってその服で過ごすのだった。しかもだ。
食べているものもだ、量は多いが。
どれも質素なものだ、アズチェンナはそのメニューや素材、調味料を見て宮廷のシェフ達にこっそりと窺った。
「あの、陛下の食されているものは」
「うん、普通だよ」
「国民の人達からのね」
「勿論毒や腐っているかどうかは確かめてるけれどね」
「それでもね」
国民からのものをだというのだ、王はそのまま食べているというのだ。
「宮廷の田畑からのものでなくね」
「陛下は宮廷ではいつもそれを召し上がられてるんだ」
「今は宮廷の田畑は宮廷で働く人の為のものを作ってるよ」
「陛下のものでなくてね」
「あの、王様なら」
どうかとだ、アズチェンナは怪訝な顔で言った。
「それこそ何でも」
「食べられるよね」
「そして飲めるよね」
「そうじゃないんですか?」
「うん、それがね」
「違うんだよ」
王様はというのだ。
「食べるものじゃなくて飲むものもね」
「特別なものは求められないんだ」
「別にね」
「やっぱり贈られてきたものがいいんだ」
「ううん、じゃあ普通のワインが多いですよね」
王室のワイナリーではなくだ。
「国民を大事にしてるんですか」
「それが王の務めだっていうお考えみたいだね」
「だからだね」
「何か違いますね」
ここまで聞いてて、アズチェンナは唸る様にして言った。
「王様ってそれこそ何でも、食べたいものも飲みたいものも何でも手に入って」
「それで着るものもだよね」
「それもだね」
「朝もご自身で起きられて」
国民からのプレゼントである目覚まし時計を使ってだ。
「お風呂も自分で入れられて着替えられてですよね」
「ご自身の靴も磨かれるよ」
「お掃除はされようとしてもね」
掃除、それはというと。
「陛下はお掃除は苦手だからね」
「そこはちゃんと君達がしているね」
「そうし
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