第三章
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「お父さん、この人前も見たけれど」
「ああ、時々見るな」
日曜の朝にリビングで野球雑誌を読んでいた父は阪神の特集を熱心に読みながらテレビをちらりと観てから応えた。
「あまりいい人じゃなさそうだな」
「いい人じゃないの?」
「他人の悪口ばかり言ってるからな」
だからだというのだ。
「いい人じゃないだろ」
「お母さんと同じこと言うんだ」
「だってそうだろ、悪口なんて言うものじゃないだろ」
こう子供に言う、丁度洗濯ものを干している自分の妻も見ながら。
「そんなの聞くよりもな」
「どうすればいいの?」
「野球でもするべきだろ」
つまりスポーツをしろというのだ。
「身体を動かしたらいいんだよ」
「悪口を言うよりも?」
「健康な肉体は健康な精神に宿るっていうだろ」
もっと言えば宿るかし、だ。宿って欲しいという皮肉語だ。ただこの父親はそこまで知らないので純粋にこう言ったのだ。
「だからな」
「お父さんは野球の雑誌読んでるんだ」
「ああ、そんな奴を観るよりな」
むしろ野球をだというのだ。
そして阪神の選手達を観ながらだ、我が子にこう言った。
「今度甲子園行くか」
「えっ、連れてってくれるの?」
「野球はグラウンドで観るのが一番だよ」
だからだというのだ。
「お母さんと一緒に行こうな」
「それで何処に座るの?」
「一塁側に決まってるだろ」
阪神の応援席、そこだというのだ。
「そこに皆で行こうな」
「うん、楽しみにしてるね」
「負けてもな」
阪神にはよくあることだ、例えどれだけ優勢な状況でも負ける。そうして胴上げを逃したことは何度もある。
「楽しむぞ、いいな」
「うん、じゃあね」
「今年もどうなるかな、どうせ打たないだろうけれどな」
阪神が何故今一つ勝てないかはこの伝統があるからだ。伝統的に投手陣はいいが打線は伝統として弱いのだ。
だがそれでもだ、父は最初から床間の罵倒は相手にせず我が子に言った。彼にとってはそうしたものだった。
そしてだ、この父親の様な人物は増えていっていた。床間はいつも罵倒や誹謗中傷ばかりしていて皆それを読んで聴いてうんざりしてだった。
やがてメディアの媒体からその芸風からも消えた、そして遂にごく一部の彼の経済主張と同じく化石となっている左翼雑誌や左翼市民とだけ付き合う様になった。
そこでも罵倒を言い挙句にはだった。
街頭で下品な演劇もはじめた、皇室の方々を誹謗中傷するものだった。
女の子しか産めない、女の子しか子種がないだのとかいう主張を延々としていた、これを街頭で行ったのだ。
観た者は誰もがだった、最初は唖然とした。
そして次にはだ、顔を顰めさせて去って行った。
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