『孔雀』と『雪風』
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がら、それでも尚表情はそらさず伊坂を睨む橘。
だが、その左腕は脇腹を押さえている。
完治していない部分が痛んでいるのか
「タチバナ!大丈夫!?」
「煩い!君は少し黙っていろ!!」
「……………っ!」
ルイズの気遣いをはねのけ橘は伊坂を睨む。
協力しようと伊坂は言った。
確かにこんな事態だ、そこに嘘は無いだろう。
この男の言い分も理解出来ないわけではない。
だが、だからこそ橘は許せないのだ。
この男にとっては人一人の命などどうでもいい、そんな自分達の過去も何もかもが『どうでもいい、大したことではない』と言い放ったのだ。
本当は今すぐにでも変身し、このふざけた男をぶちのめしてやりたい
…だが、そうもいかない事情があった。
実際、戦えば自分は勝つだろう。
召喚されルイズと契約のルーンを交わしたギャレンの力は以前の比では無い。
勿論、同様にルイズが『タバサ』と呼んだこの少女と契約した伊坂も同様のパワーアップをしている可能性は充分あった。
それでも、以前の戦いに勝利し、更なる力を手にした自分が負ける要素など何処にもない。
だが『倒す』事は出来ても『封印』する事が出来ないのだ。
アンデッドとの戦いを終えた自分が予備のプロバーブランクを持っている筈もなかった。
『封印』できない限り僅かの休息だけでアンデッドは蘇る。
恐らく、伊坂が敵対ではなく共闘を提案して来たことには自分が更なるプロバーブランクを所持している可能性を疑っての事もあるのだろう。
だからこそ、戦えない。
もしも、自分が伊坂を『封印』する術を持たないことが見破られれば、この男を抑える事は不可能だろう。
ライダーシステムに変わる何かをこの世界の文明で開発するには余りに無理があった。
だから、橘は全ての憤りを苦渋と共に飲み下す。
ギリギリと睨みながら、絞りだすように告げる。
「…もし、その娘になにかしてみろ…その時は絶対に許さん!」
つまり、なにもしない限り…現状は伊坂の存在を認めるということだ。
今はそれで充分だろう。
そう、伊坂は判断する。
「ふん……帰るぞ、話はすんだ」
コートを翻し部屋から去る伊坂、軽く頭をさげながら彼と共に部屋を出るタバサ。
「…伊坂、何故…奴だけが…」
彼等が出ていった後も険しい視線を扉にぶつける橘。
その脳内は仇敵への憎悪と疑念だけが渦巻いている。
だから、橘は気づいてやれなかった。
自分の隣にいるルイズがずっと俯いていることに。
「えぇい!」
タバサの自室に戻る道すがら、伊坂は唐突に壁を殴り砕いた。
それなりの厚みをもつ壁が紙束のように砕け散る
「…そういうのは止めて欲
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