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星の輝き
第38局
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っていた。

−…奈瀬さんは強くなったな。勉強会を始めた4月の頃は、ここまでの力をつけるとは思ってもいなかった。これも、進藤に教えを受けている成果なんだろう。だが、強くなっているのは奈瀬さんだけじゃない。このボクも強くなった。そして、もっと強くなるんだ。ボクは進藤のライバルなんだ。進藤の弟子の彼女に負けるわけにはいかない。

−やっぱり、塔矢君は強い…。まだ中盤だけど、私の黒が打ちにくい。いえ、打ちにくい碁にされている…。このままじゃ駄目だ。このままじゃ塔矢君に押し切られる。こっちから勝負を仕掛けていかないと…。

 奈瀬の表情は険しかった。


 時間の経過と共に、この日の対局の終局を迎えたものが増えていった。真柴対足立の対局は真柴の勝ち。伊角対辻岡の対局は伊角の勝ちとなった。これで辻岡は4敗、足立は6敗だ。
 
 残っている対局のうち、全勝同士の塔矢対奈瀬の周りには、多くの見物者が集まっていた。盤面は終盤。白のアキラが優勢だった。

−…盤面で見ても、白の塔矢が残ってるな。こりゃ、塔矢の勝ちで決まりか。奈瀬もいい碁を打ってるんだけど、塔矢には及ばなかったか…。さっきの奈瀬の勝負手なんか、おれだったら受け損ねていたもんな…。しっかし、絶好調の奈瀬でも駄目となると、もう塔矢はどうしようもないな…。成績上位の者との対局は前半であらかた終わってしまったしな。本田や和谷じゃかなわないだろう…。

 真柴は改めて塔矢の強さを思い知らされていた。だが、塔矢の強さが本物であるがために、一筋の希望も見えてきていた。

−本田と和谷が2敗だが、二人ともまだ塔矢、奈瀬、伊角君との対局が後半戦に残っている。ということは、黒星が3つ増える可能性はかなり高い。そして、俺との対局もまだこれから。直接対局で倒せれば…。現時点の勝敗以上に、あいつらはきついはずだ。伊角君は去年、後半戦での負けが多かった。プレッシャーに弱いんだ。奈瀬だっていつ調子を崩すか分かったもんじゃない。伊角君と奈瀬の直接対局もまだだしな。そうだ、まだこれからだ。まだ後半戦が始まったばかりなんだ…。まだまだ、あきらめるには早い。

 真柴は、自分に言い聞かせながら、塔矢対奈瀬の対局を見つめ続けた。


 全勝同士の注目の対決は、奈瀬の奮闘及ばず、アキラが勝利を手にした。


 
 この結果、トップは全勝の塔矢。1敗の伊角と奈瀬、2敗の本田と和谷が続く展開となった。まだ上位陣のメンバーは、誰もが自分の勝ち残りをあきらめてなどいなかった。
 
 プロ棋士採用試験は、過酷な生き残りをかけて、後半戦へと突入していった。


 すでに、半数以上のメンバーにとっては、合格は絶望的なものとなっていた。

 それでも、彼らは決して妥協した碁など打たない。

 それが
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