私のご主人様
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ピカの赤色ランドセルを背負い、前にはどす黒いよれよれの(リコーダーが脇に刺さっていて、体操着袋が掛けられている)を掲げている。端正な顔立ちと大きなマリンブルーの瞳が見る者を魅了させてやまない。まるで愛されるために作られた芸術品。そんな彼女が今、顔を真っ赤染め上げ、全身に汗をほとばしらせながら近づいてきたのだ。
「汗くさ! お前、不潔だな」
「!? う……うぇ……うぇ……」
「冥星君…………?」
「冥星、てめぇ……」
「冥星……」
まるで汚物を見るような目で周りの者が冥星を睨む。あーあ、なーかせた! と言わんばかりにどうにかしろよお前、と小突きあげる隼人。どうやら、汗臭いという単語がエリザにとってかなりショッキングな言葉だったようだ。女という生き物は汗臭いのが嫌いらしい。明子はすぐファ○リーズをしたがる。主に、冥星の体に。
「しょーがない。エリザ、スカートを捲れ」
「なななななななななな……なんですかいきなり――――!?」
「今日はスカートを捲りたい気分なんだ。いいから捲れ。俺の命令だ」
「む、無理ですよぉ……許してください〜!」
「雛人形とゴリラ(仮)は喜んで捲っていたぞ」
「記憶をねつ造すんな!」
「勝手に痴女にしないでちょうだい」
「ええ? そうなんですか……? うぅ……じゃ、じゃあ私も……」
話を聞け、というかじゃあってなんだ。そんな突込みが二人の口から出る余裕もなく、エリザは自らのスカートに手をかけた。あの、清楚で純真な心の持ち主の、男子の憧れる彼女にしたいランキングダントツ一位のエリザが。今痴女になりかけている。
「と思ったらお前の面白い顔などいつでも見れるからやめだ、やめ」
「え? ええ?」
「よし、帰るぞ、ああ、その前に」
突然突風が凛音と姫を襲った。もちろん犯人は冥星。してやられたという感想は抱くもののその風から逃れることはできない。みるみるうちに二人の顔が真っ赤なトマトのように染まっていく姿は本当に滑稽だ。
「あ……が、て、め、ぇ…………」
「お、落ち着きなさい、凛音。大蔵の者がこの程度で……この程度で相手を殺したと思ってしまってはだめ!!」
「よし、ずらかるぞエリザ! 面白くもない物を見てしまったが、あいつらの顔が何よりの収穫だ」
「……最低です、めーせいさま……」
エリザは主のしょうもない姿に泣きながらついていく。きっと明日袋叩きにされるのにどうしてこんなことをするのだろうか、という疑問が絶えない。とりあえず、自分のスカートは安全であることにホッと一息つくのだった。
「殺す、あいつは殺す。絶対に殺す」
「……やめなさい。凛音。不覚をとった、それだけのことよ」
「……姫はいいのかよ?」
「別に、構わないわ」
「相変わらず、冥星には
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