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セロリ
第四章

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「彼女は打線がいいって言うから」
「ダイナマイト打線か」
「そう、そこが違うんだ」
「成程な」
「本当にそれぞれ違うね」
 同じ阪神ファンでもだ。
「もっと言えば僕の家の宗教は浄土宗で」
「うちはどっちも真言宗だよ」
「彼女は浄土真宗なんだ」
「どっちも一緒じゃないんだな」
「何か微妙に違うね」
 口ではよく言えないがそれでも実感としてそれはわかった。
「法然さんと親鸞さんで」
「そうなんだな」
「うん、そうした違いがあるね」
「本当にそれぞれ違うな」
「だから食べものでも」
 それについてもだった。
「好き嫌いがあるね」
「どうしてもな、その違いがな」
「うん、セロリが好きだったりな」
「本当にあるよ、誰にも」
「そういうことだね」
「俺と御前だって違うからな」
 同じ職場の同期でもだ。
「そこは」
「そうだね、何かと」
「ああ、そういうことだからな」
「彼女がセロリが好きでも」
「別に構わないだろ」
「そういうことだね」
「ああ、ただな」 
 ここでだ、同僚は僕にこんなことも言って来た。
「それでも一緒に住んでいてお互いに好きならな」
「それならだね」
「違いはあってもな」
 それでもだと言うのだった、ここで。
「歩み寄るところは歩み寄って」
「そうしてだね」
「ああ、協調していくのもな」
「人間だね」
「人付き合いってやつだよ」
 そういうものだというのだ。
「だから俺も何とかな」
「梅干や豚の脂身も」
「ああ、それもな」 
 そうしたことをだというのだ。
「何とか食べる様に努力してるよ」
「一緒に住んでいてお互い好きだったら」
「それならな」
 こう話してだ、そのうえでだった。
 僕達は一緒に仕事をした、そして家に帰ってだった。
 彼女が帰って来てだ、こう僕に言って来た。
「今日の晩御飯はスパゲティ作るわね」
「スパゲティなんだ」
「そう、トマトとマッシュルームと大蒜とね」
 それにだった。
「あとセロリも入れるから」
「セロリはちゃんとね」 
 僕に笑顔で話してくれる、ズボンとシャツの外出着の上にそのままエプロンを着けながら部屋着になっている僕に言ってくれる。
「火を通すから」
「そうしてくれるんだ」
「そう、けれど生で残して」
「そうしてだね」
「私も食べるけれどね」
 そうするというのだ。
「スパゲティは作るから楽しみにしておいて」
「うん、わかったよ」
「スパゲティとね」
 それにだった。
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