第一章
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セロリ
彼女と同棲をはじめて三日で気付いた。
一緒に朝御飯を食べているとだった、彼女は僕の向かい側でセロリを食べていた、生のセロリにマヨネーズを付けて。
それを見てだ、僕は彼女に言った。
「君セロリ食べるんだ」
「ええ、そうよ」
そうだとだ、彼女は何でもない顔で答えた。
「結構好きよ」
「へえ、そうだったんだ」
「それ貴方は違うの?」
「そう言われるとね」
それはだった、僕の場合は。
「実は僕セロリはね」
「嫌いなの」
「火を通したら食べるよ」
パスタに入れたりする、それならだった。
「けれどね」
「それでもなの」
「うん、生だとね」
苦笑いで彼女に答えた。
「食べないんだ」
「そうなのね」
「身体にいいんだよね」
「ええ、凄くね」
彼女の朝はいつも野菜スティックだ、それか果物だ。どちらにしてもヘルシー志向でそうしたものを朝に食べる。僕も彼女が作ってくれるそれを食べているが。
自分のところにあるセロリのそれを見てだ、彼女にこうも言った。
「それはわかってるけれど」
「生のセロリは食べないの」
「そうなんだ」
実際にそうだと答えた。
「悪いけれどね」
「悪くないわよ、こういうの好みじゃない」
「君にも嫌いなものあるんだ」
「椎茸が駄目ね」
茸のそれが、というのだ。
「どうもね」
「そうなんだ」
「あれも身体にいいのよね」
「僕好きだよ」
「お鍋とかお味噌汁に入れたら大丈夫だけれど」
それでも、とだ。セロリの野菜スティックを食べながら僕に話してくれる。
「それでもなの」
「そういえばこれまで椎茸は」
「あまりお料理に使ってなかったでしょ」
「ダシには使ってたわよね」
「ええ、ダシに使うのは大丈夫なのよ」
それでもとだ、彼女は僕にこう話した。
「けれどバター炒めとかね」
「そういうのは駄目なんだ」
「そうなの、椎茸はね」
「そうだったんだ」
「貴方も生のセロリが苦手だから」
「一緒だね」
「貴方椎茸のバター炒めは」
僕と同じ様にだった、尋ねてきた。
「好きなの?」
「実はね」
僕は少し気まずそうに笑って答えた。
「好きなんだ」
「そうなのね」
「そうなんだ、それも大好きなんだ」
「私も生のセロリはね」
「大好きなんだ」
「ええ、けれどお互いに大好きなものが食べられないなんてね」
「まさかそうなるなんてね」
僕も気まずそうな笑顔のまま応える。
「思わなかったね」
「そうね、けれどこういうことってね」
「やっぱりあるよね」
「二人が好きなものが全部同じとかね」
「そんなのある筈ないからね」
それがどうしてかは言うまでもない、けれど僕はあえて言った。
「人間だ
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