暁 〜小説投稿サイト〜
やはり俺がワイルドな交友関係を結ぶなんてまちがっている。
こうして、比企谷八幡の最後の日常は幕を閉じる。
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もぼっちな俺は本に視線を落とす。気心知れた仲の間でも独りって、やっぱり俺ぼっちマイスター。

何て思っていると、突然由比ヶ浜に声をかけられた。

「ヒッキーもそれでいい?」

「…………ん?」

「やっぱり聞いてなかったし!」

由比ヶ浜はプンスカと肩を怒らせ、こちらをビシッと指してくる。

「ヒッキーもカラオケ行くの!」

「えー、嫌だよ」

何が楽しくて休日に家から出なきゃならんのだ。

「行くって言ったら行くの!ほら、小町ちゃんにも許可もらったし」

由比ヶ浜が見せてきたケータイには、確かに小町からの許可のメールが映っていた。いつの間に。

っていうか、なんなの? 何で俺の外出許可を妹が出してんの? あいつは俺の保護者か。………いや、小町に養ってもらえるならお兄ちゃん本望なんですけどね。

だがそれとこれとは別だ。俺の貴重なくつろぎタイムはだれにもじゃまさせない。

「雪ノ下、お前はいいのかよ、由比ヶ浜との時間を俺なんかに邪魔されて」

一縷の望みをかけて、雪ノ下に話をふる。

彼女は顎に手をやり、考えるような仕草をした。

「………良いんじゃないかしら」

「おい」

「別にあなたに来て欲しいなんて微塵も思っていないのだけど由比ヶ浜さんがあなたに来て欲しいと言っているわけだしそもそも私たち二人で出掛けてあなただけ仲間外れというのもあわれだわそうあくまでこれは慈悲よあなたの孤独体質を治すという依頼の延長よ勘違いしないでちょうだい怪我らわしい」

一息で言い切り、ぜいぜいと息をしている。
何かもう俺に拒否権はないみたいです。

「分かった、分かったよ。行けばいいんだろ」

どうにも俺もまんざらでもない顔をしていそうなのが、困りものだった。





空から引いていく紅い光が一日の終わりをつげる。
時計を見ると、そろそろいい時間だった。

「そろそろ、終わりにしましょうか」

雪ノ下も同時に時計を見たようで、すっと立ち上がった。
由比ヶ浜もそれに追随する。

「じゃあ、私は平塚先生に部室の鍵を返してくるわ」

「あ、ゆきのん、あたしもー」

「ええ、一緒に行きましょう」

手早く荷物をまとめ、三人揃って部室を出る。

「じゃあね、比企谷くん」

「またね、ヒッキー」

手を振ってくる二人に、軽く手を挙げて答えた。

「おう」






いつもと変わらない、素っ気ないとも言える別れ。

だからかもしれない。懐かしく思えるのは。

いつだって一番大切なのは日常で。誰もそれを壊すことなんて望んでいなかったのに。



ーー
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