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騎士道精神
第九章

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第九章

 ロットナー興もだ。満足した顔で帰国した。そうしてだった。
 執事のアルマーに笑顔で話した。
「日本はいい国だね」
「御気に召されましたか」
「うん、騎士道がある」
 彼にもこう言った。
「とてもね。だからね」
「だから?」
「また行くよ。勿論八条学園との提携もね」
「受けられますか」
「是非ね。こちらから頼みたい位だよ」
 そこまでだというのだった。
「本当にね。それじゃあ」
「はい、それでは」
「今から食事だけれど」
 その話になった。
「日本の食べ物がいいかな」
「日本のですか」
「うん、刺身だったかな」
 話に出すのはそれであった。
「それがいいかな」
「刺身とは」
「魚を生で切ってそれを醤油で食べるんだよ。日本のソースでね」
「ふむ。変わった食事ですね」
「話には聞いていたけれど見るのも食べるのもはじめてだったよ」
 彼はそれまで和食には疎かったのだ。それで、である。
「けれどね。これがね」
「美味ですか」
「うん、美味しかったよ」
 こうアルマーに話す。
「だからね。今からね」
「畏まりました。それでは」
「レストランに行こう」
「そしてそれからは」
「三時お茶もね」
 ティータイムについても話す。イギリス人の風習の一つだ。彼等はその時間になると紅茶を楽しむようにしているのである。紅茶は彼等の友人だ。
「緑茶にしようかな」
「緑茶?緑ですか」
「これも日本のお茶だよ」
 こうアルマーに話す。
「それにしようかな」
「ふむ、面白そうですな」
「これも日本のレストランで飲めたと思うし」
「左様ですか」
「飲むとしようか」
 こう話しながら笑顔になっていた。卿は明らかに上機嫌であった。
 その上機嫌のまま。さらに言う彼だった。
「騎士道は他の国にもあったんだ」
「日本にも」
「やはりまだ廃れてはいない。私も頑張らないとな」
 こんなことを言っていた。彼は以後もその騎士道を守り行っていった。それは永遠に残すべきものである、そう信じてである。


騎士道精神   完


                    2010・9・27

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