第二部 vs.にんげん!
第21話 もう、いいよ。
[1/8]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
煉獄の探索を行う日々が続いた。仲間や先輩冒険者たちと組んで煉獄を進む内、何度かシェオルの柱の実物を目にする機会があった。その材質は人間の皮膚に似ており、煉獄内の空気の振動にあわせて波打つように震える様子は、何かの胎動のように思えた。だが、ティアラが言うような光を放つ柱は一向見つからない。
「今日からは二手に分かれて行動することになる。これはティアラちゃんの提案だが、聖書によれば魂は死後、煉獄内を次の層へ、次の層へと進んでいくそうだ。まだ目覚めてねぇ若い奴の魂も、俺たちが思うよりだいぶ下の層にあるかもしれねえってわけさ」
教会の礼拝室で、冒険者たちは神妙な面もちでフォルクマイヤーの説明を聞く。
「そこでだ。片方のチームは引き続き煉獄の上層から、もう片方のチームは先回りし下の層から光るシェオルの柱を探す。一応希望を聞いておこう。下の層から探したいヤツはいるか」
ウェルドとサドラーが手を挙げた。フォルクマイヤーは頷く。
「……そういや、もう一人の凶戦士化したお嬢ちゃんが見えねぇな」
ノエルはまだ、部屋に引きこもったままだった。
目覚めてすぐの頃には自分のことしか見えなかったが、今でははっきりと、町が変わってしまった事がわかる。空も、雪も、石造りの建物も、投げやりな怒りを吸いこんで、静かで暗い。
ある時ウェルドは物を取ってくるようティアラに頼まれて、教会の地下に入っていった。場違いな笑い声が、階段を下りると聞こえてきた。
助司祭カドモンと数人の男たちが、テーブルの上で賭け符を捲っていた。
「よう、凶戦士の殺人鬼野郎じゃねえか。人間のクズが何の用だ?」
酔った男たちが声を上げて笑う。
ウェルドは怒りを堪え、黙って部屋の奥に入っていった。棚から頼まれた物――氷嚢と包帯を取る。
「おい、無視してんじゃねえ」
声の響きが剣呑になる。
「もう一人の女はどうした? 最近見ねぇが、あのクズ野郎が折角助けてやったってのに働きもしねぇで何やってんだ? えっ?」
無視してカドモンの後ろを通り、部屋を出ていこうとした。
「まあいいや、おめぇには感謝してるんだぜ。お前が派手に暴れてくれたお陰でこの町が正しい姿に戻るってな」
ウェルドは一瞬、足を止めてしまった。
「ここに来れば盗みも殺しもし放題だって聞いて来てみりゃよ、あのバルデスとかいうクソ野郎が仕切っててどいつもこいつも変にいい子チャンじゃねえか。その時の俺様の失望と来たらなかったぜ。でもよ、それもじきに終わりだ。カルス・バスティードは本来の無法者の町に戻るんだよ!」
氷嚢も包帯も放り投げて、一発で良いからぶん殴りたい、その衝動に耐えることができたのは、階段の上からサラが覗きこんだからだ。
「ウェルドさん、どうしたの?」
下衆な男たちの笑い声を背に
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ