第126話 宴 前編
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。彼らの一部の部族は鮮卑族に武力で従属され定期的な貢物の献上を強要されていた。規定の貢物を献上できない場合、部族の女を奴隷として奪われるほどの苛烈な支配を受けていた。鮮卑族達からすれば正宗の烏桓族への姿勢は理解不能なのだ。今後、正宗が烏桓族を積極的に保護していくことを避けなければと考えているはず。彼らにとって正宗の姿勢は鮮卑族の権益を犯すことに繋がるからだ。鮮卑族としては正宗との友誼を深め自分達の有用性を知らしめ、彼が烏桓族と少し距離を置くことを望んでいる可能性が高い。
「鮮卑族と烏桓族の関係は聞き及んでいる。鮮卑王の遣り様に今の段階でとやかく口出しをするつもりはない。しかし、私を頼る者達に手を差し伸べることを躊躇することはない。文句の一つも言えぬ間柄では信頼など築けぬのでないか?」
正宗は柯最の表情を真っ直ぐ見つめ力強く言った。その言葉に柯最は驚くが少し間を置いて、盛大な笑い声を上げた。
「失礼いたしました。清河王は剛毅であられる。感服いたしました。この柯最の真名をお受けくださいますか?」
「卿の『真名』をか?」
正宗は柯最を訝しむ。柯最は彼の態度など気にせず話を進める。
「他意はございません。これは鮮卑族の大帥としてでなく、柯最個人として申しております。お受けくださいますでしょうか?」
柯最は先ほどまでと違い爽やかな笑顔で正宗に言った。
「そうまで言われては断れない。許す」
柯最は満足げな表情を浮かべ、恭しく拱手し頭をたれた。正宗は彼女の衣服が露出の高いため目のやり場に困っているようだった。
「私の真名は『蒼鈴』でございます」
「私の真名は『正宗』だ。私を真名で呼ぶことを許す」
「はは! ありがたき幸せでございます。謹んで真名をお預かりさせていただきます」
蒼鈴は頭を上げ真っ直ぐ正宗の瞳を見つめるように顔を上げた。
「正宗様、真名を交換しためでたき日を記念して、宴の余興に私と手合わせをお願いできませんでしょうか? 正宗様の武勇は聞き及んでおります。是非に未熟な私めに指南いただきとうございます」
正宗は蒼鈴の言葉に表情は変えなかったがまんまと蒼鈴に乗せられたのでないかと内心思った。蒼鈴は正宗の表情を窺いつつ期待に満ちた表情を返す。
「柯最殿、分を弁えられよ。あまりに無粋ですぞ」
揚羽の言葉は最もだった。蒼鈴の主君、鮮卑王の同盟相手に手合わせを願い出る。常識的にありえない。しかし、この機会でなければ蒼鈴が正宗に手合わせを願いでる機会は訪れないだろう。機会があるとすれば彼女の主君と正宗が矛を交える時である。
「鮮卑族とは君臣の礼も弁えぬですか?」
宴席の場に訪れた冥琳が正宗達の話を聞きつけたように近寄ってきた。
「
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