第126話 宴 前編
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と麗羽は何も言葉を交わさず静寂の時を過ごした。
「何進様、沢山の兵士が死にましたわ」
静寂の中、麗羽は正宗にのみ聞こえるような小さい声で喋りだした。その声音は力無く、次第に嗚咽が混じっていた。正宗は彼女に何も言わずただ力強く抱きしめた。
「正宗様は何進様の死を知っていましたの?」
麗羽はしばらく泣いた後、涙に濡れた瞳で正宗を見上げ縋るような目で見つめてきた。
「知らなかった」
正宗は麗羽の言葉に表情を崩さず返事した。正宗の心中は麗羽への罪悪感で一杯であった。
「信じてよろしいのですね?」
「ああ」
それを聞いた麗羽はそれ以上何も言わず、彼の胸に顔を預けしなだれかかった。
「正宗様を信じますわ。もう暫くこのままでいさせてください」
その後、正宗は麗羽を何も言葉を交わさず日が暮れるまで同じ時間を共に過ごしたのだった。数刻後、麗羽は安心したのか寝息をたて眠りについていた。正宗は彼女の寝顔を見つめながら、彼女の頭を優しく撫でていた。
「生きていてくれてよかった。本当によかった」
正宗は誰にも聞かれることのない独白をつぶやいた。
「正宗様、宴の刻限です」
正宗と麗羽、二人だけの時間を過ごす中、麗羽の部屋の外から正宗を呼ぶ声が聞こえた。声の主は揚羽のようだ。
「揚羽か。少しまて」
正宗は麗羽を寝所に丁寧に寝かせつけると、麗羽の部屋を出た。戸の外には揚羽が控えていた。
「麗羽殿の容態は?」
揚羽は正宗が出てくるのを確認するなり声をかけてきた。
「麗羽は疲れて寝ている。このまま寝かせてやりたい。他の者達はどうだ?」
「麗羽殿以外は参加できそうです。麗羽殿にも参加していただきたかったですが、容態がすぐれないのであれば致し方ありませんね」
正宗と揚羽の二人は麗羽の部屋前から去った。彼らは宴の会場のある場所へ繋がる回廊へと向った。
回廊へ着くと外の景色を既に日が沈み、回廊の両隣にかがり火が点されていた。その光景は幽玄の雰囲気を漂わせていた。彼らは風景へ視線にやることなく目的の場所へと向う。
「正宗様、麗羽様との話は滞り無くいきましたか?」
揚羽は周囲の気配を気にしながら正宗に低い声で声をかけた。
「問題ない。麗羽に告げたとしても、それは私が罪悪感から逃れたいが故の保身でしかない」
正宗は歩を止めることなく返答した。揚羽も彼の後を遅れることなくついてくる。
「それはようございました」
揚羽は正宗の言葉に満足そうな表情を返した。
「揚羽、このことは私と揚羽と冥琳の三人だけの秘密だ。墓場まで持っていく」
「覚悟しております。冥琳殿も重々承知しておりま
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