第七章
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第七章
「貴方達の中でもラグビーをされる方はおられますか?」
「ええ、まあ」
「一応は」
日本の政治家達は彼の言葉に正直に答えた。
「している者もそれなりにいます」
「総理大臣関係者にもいますし」
「そうですか。それならです」
このことも聞いてだった。卿はさらに話した。
「では」
「はい、では」
「何を」
「私達もラグビーをしている者が多いですし」
伊達にラグビーの本場ではなかった。はじまりはサッカーの試合中にラグビー校の生徒がボールを脇に抱えてサッカーゴールに突入したことにある。ラグビー校はイギリスの名門校の一つである。
「ですから。是非」
「あの、剣道は御覧になられないのですか?」
「柔道も」
日本側はこのことにこだわっていた。
「それはないのですか?」
「宜しいのですか?」
「いえ、それも見させてもらいたいです」
それはだというのであった。
「しかし日本のラグビーをです」
「御覧になられたい」
「そうなのですか」
「是非共。宜しいでしょうか」
ロットナー卿はまた言った。
「それで」
「そうですね。それでは」
「そこまで仰るのなら」
「やりましょう」
日本側もここで頷いた。これで決まりだった。
次の日。日英の政治家達はそれぞれラグビーのユニフォームを着てグラウンドに集まった。無論その中にはロットナー卿もいる。
彼はだ。イギリス側を代表して日本側に言った。
「それではです」
「はい、それでは」
「これからラグビーをですね」
「やりましょう」
笑顔で言ってだった。それがはじまりだった。
試合は親善試合であった。だが白熱した試合になっていた。体格で劣る日本側はフットワークを駆使して戦う。イギリス側はパワーで押す。
勝負は結果としてイギリスの勝利だった。フットワークにしても彼等の方が上だった。伊達に発祥の地ではないということであろうか。
しかしだ。ロットナー卿は敗れた日本側にだ。こう言うのであった。
「有り難うございます」
「有り難う?」
「有り難うですか」
日本の政治家達は誰もが肩で息をしている。年齢のせいだった。ラグビーというものはサッカー以上に激しいスポーツだからだ。
そしてそれはイギリス側も同じだった。しかしロットナー卿だけはだ。汗をかきながらもそれでもだ。毅然とした態度のままであった。
その態度でだ。日本側に礼を言ったのだ。
そしてだ。その理由も話すのだった。
「見せてもらいました」
「何をですか?」
「一体」
「騎士道をです」
それをだというのだ。
「貴方達は私の申し出を受けてくれましたね」
「ラグビーをですか」
「この試合のことですか」
「はい、まずはそれです」
まずはというのであった。
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