第六章
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第六章
「ええと、剣道場に行けば?」
「柔道場がいいのでは?」
「いえ、居合では」
日本側は武道を話に出していた。
「やはり武士道と言えば武道ですよね」
「ええ、確かに」
「そうなりますよね」
「やっぱり」
「ふむ。日本の剣術や格闘術ですか」
イギリス人であるロットナー卿にとってはだ。剣道や柔道はそうしたものであった。この辺りにも文化の違いが出ていると言えた。
「それにですか」
「ええ、そう思います」
「今から御覧になられますか?」
「そちらを」
「そうですね」
一呼吸置いてから彼等の言葉に返した。
「はい、それでは今から」
「道場に向かいましょう」
「道場というと」
卿はここでも考えた。イギリス人の視点から。
「あれですか。トレーニング場ですか」
「ええ、そんな感じです」
「そうした場所です」
日本側はこう応えて説明とした。そうしてであった。
他のイギリスの政治家達と一緒にその道場に向かう。だが途中でだ。
イギリス側の議員の一人がだ。右手を見て言うのであった。
「ほほう、これは」
「どうされました?」
「いや、見事ですね」
見れば右手でラグビーの練習が行われていた。それを見ての言葉だったのだ。
「本当に」
「見事とは?」
「といいますと?」
「いえ、いいラグビーをしています」
ここでは英語と日本が交差する。通訳が仕事をしていた。
「まことに」
「そういえば確かに」
「動きがいいですね」
「身体こそ小さいですが」
ここで他のイギリスの議員達も見て話をした。
「いや、日本でもラグビーをやっていたとは」
「しかもこれだけのものとは」
「想像もしませんでした」
「本当に」
こう話しながらだ。さらに見ていく。するとだ。
そのラグビーの練習を見てだ。ロットナー卿も言った。
「ふむ、これは」
「まあ日本もラグビーはしています」
「一応ですが」
日本の議員達の言葉は今一つ歯切れがよくなかった。
「しかしです」
「やはり貴国やオーストラリアには適いません」
「いえ、そういう問題ではありません」
卿はその彼等にこう返したのだった。
「それとはです」
「といいますと」
「どういうことですか、それは」
「一体」
「ですから。勝負の問題ではなく」
彼はその歯切れの悪い彼等に話す。
「どれだけ正々堂々と。毅然としてしているかです」
「それですか」
「それなのですか」
「はい、そうです」
まさにそれだというのである。
「ですから」
「ですから?」
「何を」
「一つ提案したいことができました」
こう日本の政治家達に話す。
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