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ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 後編
一人ぼっち×一人ぼっち×一人ぼっち
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え一人でダンジョンをうろつくことなど危険極まりないのに、もし道に迷うようなことがあれば、偶然森の外か安全圏に入るか、他のパーティーと出会うことがなければ抜け出すのはかなり難しくなる。
 それを知っているからだろう、男性が必死に呼び止めようとするが、女子プレイヤーは全く聞く耳を持たない。やがて彼女の後姿が林立する木々の中に消え、暫しバツの悪そうに立ち尽くしていた――彼女と口論していた女性だけは勝ち誇ったように笑っていたが――パーティーも諦めたように再び帰路に着いた。夜の闇が段々と濃くなっていく森の中、わたしたち二人だけが取り残される。
 そして人の気配が完全に消滅した頃、マサキ君は茂みからようやく抜け出した。

「行くぞ」
「あ、あの女の子……」

 ――助けないと。続くはずだった声はしかし、喉の奥に引っかかって出てこなかった。本当にわたしが言おうとしたことなのか、また自分のエゴのために言おうとしたのか、分からなかったから。
 わたしの声に反応したマサキ君が横目でこちらを見、その涼やかな視線がわたしのそれを受け止める。

「分かってる」

 彼は一度地図を確認すると、また走り出す。その先は、女の子が一人歩いて行った方角だった。

 それから約十分。わたしたちは女の子を追いかけて走り続けていた。彼女が迷わずに森を抜けられていればいいのだけど、西へ東へ向かう方角を変えながら走るマサキ君を見るに、その可能性はあまり高くないようだ。わたしの索敵スキルにも、プレイヤーの反応はない。わたしよりもよほど索敵スキルの値が高いのか、それとも何か別の手段をとっているのかは分からないが、先を走るマサキ君に迷った様子がないのが唯一安心できる点だった。
 それでも索敵スキルを最大限使って反応を探していると、前方に一つ、プレイヤーのカーソルが出現した。良かった、無事だった……と安堵しかけた瞬間、その周囲を取り囲んでいる敵の存在に気付く。

「……っ!」

 反射的に足を速めようとした刹那、前を走っていたマサキ君の姿が消えた。と言っても、魔法を使ったわけじゃない。ただ単に、走るスピードを上げただけ。だが、そこから倍近いスピードを一瞬にして出したために消えたと錯覚したのだ。今までだってそれなりのスピードで走っていたというのに。
 見失った彼の姿は、遥か前方で再発見できた。腰元の鞘から蒼風が引き抜かれ、半透明の刀身が淡い光を帯びる。直後、マサキ君はスピードを落とすことなく蒼風を一閃。女の子を取り巻いていた三匹のドランクエイプが、切り裂かれ、吹き飛ばされ、そして同様に爆散した。

「大丈夫!?」

 それから数秒遅れてわたしが駆けつけると、少女は虚ろな瞳から涙をとめどなく流しながら崩れ落ちた。
 そのすぐ前には、一枚の綺麗な水色の羽根。
 女の
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