アインクラッド 後編
一人ぼっち×一人ぼっち×一人ぼっち
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、その声に疑問の色が混じった。マサキがよこしたコルが、アルゴが要求した額よりも明らかに多いのだ。この二人の取引は長い間――それこそゲーム開始以来ずっと続いている上、聡明な彼が要求額を間違えるとは思えない。
アルゴが疑念の色を浮かべてマサキを見ると、彼の顔に浮かんでいた嫌気はとうに消え失せ、代わりにレンズの奥から鋭い視線が放たれていた。
「――もう一つ、今日中に調べて欲しいことがある」
その日の夕方。わたしたちは三十五層フィールドダンジョン、《迷いの森》にいた。あの後四十分ほどして再び姿を見せたマサキ君はわたしに近寄るなり、まるで明日の天気でも話すかのように平然と言った。「三十五層に行くから、着いて来たければ来い」と。
行く当てのないわたしは二つ返事でそれを了承、その後消費アイテムを用意したり素材を街で買い集めてから再びリズの店に向かって蒼風を直したり――マサキ君がプレート系の防具に短剣まで注文していたのは未だに謎だけど――の準備をしてから転移門をくぐると、既に日はそれなりに傾いていた。
もう今日は宿を取って終わりかと思ったわたしだったが、どうやら彼はそのつもりではないらしく、何かを探すように主街区を歩き回った挙句街を飛び出した。そのまま迷いの森までの道を駆け抜けて森に入り、今は立ち並ぶ木々の間を走り回っている。
と、前を走る彼が突然左に方向転換した。反射的にわたしもそちらへ曲がる。
それからほんの少し走ると、前方に一つのパーティーが見えた。時間から考えて帰り道かと思ったが、何だか様子がおかしい。マサキ君は彼らを見つけると、近くの木陰に身を潜めた。別に隠れなくても……と思いながら、しかしそれを言えずにわたしが続く。
そのまま暫し様子をうかがっていると、どうやらパーティー内で口論が起きているようだった。グループの両端で真っ向から二人の女性プレイヤーが罵り合っていて、その間に挟まれたリーダーらしき男性が必死に二人を宥めている。だがそれも全く効果が現れず、それどころか口論はますます激しさを増していく。
「アイテムなんかいりません。あなたとはもう絶対に組まない、あたしを欲しいっていうパーティーは他にも山ほどあるんですからね!」
「あっ……」
捨て台詞を吐いて枝道に入って行ってしまう女の子を見て、わたしは思わず声を漏らしてしまった。と言うのも、今わたしたちのいるフィールドダンジョン《迷いの森》は、碁盤の目状に分割された数百ものエリアで構成され、そのうちの一つに入ってから一分が経過すると東西南北に隣接した四つのエリアへの連結がランダムに入れ替わってしまうのだ。そのため、森を確実に抜けるには一分以内にエリアを走り抜けるか、主街区の店で販売されている地図アイテムで現在の連結を確認しながら進む以外にない。ただでさ
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