アインクラッド 後編
一人ぼっち×一人ぼっち×一人ぼっち
[4/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
面に腰を下ろした。そこにはもう先ほどの男性の姿はなく、テーブルの隅に置かれた空のカップ一つが彼のいた名残を示しているばかり。アルゴは間髪入れずにやってきたNPCウエイトレスに紅茶を一つオーダーすると、すばしっこくマサキに向き直る。“商談”に入るときの合図だ。
「で、今日は何が聞きたイ?」
「《タイタンズハンド》とそのリーダー、《ロザリア》について」
いつもと変わらぬポーカーフェイスでマサキがそう言葉を発した瞬間、アルゴの表情が急に真剣みを帯びた。小さな体躯とコミカルな三本線ペイントからは想像もつかない鋭い双眸がマサキを射抜く。
「……何でまタ、オレンジギルドなんかのことを聞ク?」
「悪いが、こちらにも守秘義務ってものがあるんでね。……殺しはしない。黒鉄宮に送るだけだ」
前半は少しおどけたように、しかし後半はいたって真剣な声色でマサキは答えた。マサキとアルゴ、両者から発せられた鋭利な刃物のような視線がその間に置かれたテーブルの上で交錯する。
やがて、アルゴが観念したように目を伏せ、マサキに向かって指を三本立てた。それを見たマサキは淡々とウインドウを操作し、オブジェクト化した小袋に硬貨を入れてテーブルの上を滑らせる。アルゴは小袋を受け取ると、若干の迷いを残しながら口を開いた。
「手段はよくあるものダ。リーダーがパーティー内部に入り込んで品定めしテ、金品を溜め込んだところを大勢で待ち伏セ。最近だと、三十五層で目撃証言があっタ」
その後、アルゴは続けてロザリアの見た目や言動等の特徴やギルドの構成等を滞りなく説明し終えた。椅子の背もたれに体重を預け、いつの間にか目前に置かれていたティーカップに手を伸ばす。
「そう言えバ、《竜使いシリカ》も今は三十五層にいるらしいナ。迷いの森で狩りをしてるそうダ」
「……《竜使いシリカ》?」
同じようにコーヒーに口をつけていたマサキが尋ねると、アルゴはニッと笑い、「これはサービスだヨ」と前置きしてから続ける。
「《フェザーリドラ》をテイムしたってプレイヤーだヨ。顔も中々可愛くて、今や中層のアイドルプレイヤーダ。モテ期到来中のマー坊なら、お近づきになれるんじゃないカ?」
「何を言い出すかと思えば……。残念ながら、そんなもの、まだ一度たりともお目にかかったことはない」
「ほホー、そうカ? 今さっきそこの広場であの《モノクロームの天使》がマー坊の帰りを待ちわびてたゾ? まるで何ヶ月も会ってない恋人でも待ってるみたいな顔だったナ」
「冗談だろう。止してくれ」
「ニャハハ、まあ進展があったらその時はオレっちがその情報を全プレイヤーに余すことなク……?」
うんざりの四文字を露骨に顔に刻んだマサキをよそに、アルゴは話を続けていく。が、受け取った小袋の中身を見た瞬間
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ