アインクラッド 後編
一人ぼっち×一人ぼっち×一人ぼっち
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言言い残し、マサキ君はその男性のもとに歩いていく。となれば必然的に、わたしは一人、その場に取り残されてしまうのだった。
一度、大きく息を吐く。
「ここにいろ」と言われたからといって、一歩たりとも動けないわけではもちろんない。が、わたしは彼の言いつけを馬鹿正直に守ってその場に立ち尽くしていた。スカイブルーの空を映す次層の岩盤とその下を悠然と流れていく白い雲とを呆然と眺める。
昨日までのわたしだったら、あの男性に声を掛けていたのだろうか。近くにあった開店前の屋台の壁に身体を預けながら、わたしはそう自問した。「仲間の仇を討ってくれ」という彼の願いを聞き入れるのは、恐らくわたしでは無理だったろう。けれど、話を聞くなりして落ち着かせるとか、何かしらの対処はしようとしたと思う。そして、それが本当に「いいこと」なのかは、わたしはきっと考えなかった。だって、それは彼のためではなく、ただわたしの欲求を満たすためだけの善であり、優しさだったのだから。
「……騙してた、のかな。やっぱり」
今日になって、今更ながら自分のしてきたことをわたしなりに考えた結果、どうしてもそこに辿り着いてしまうことに気がついた。どんなに人を助けようと、どんなに人の役に立とうと、それは結局わたしの為で、ただ「世のため人のため」なんてご大層な仮面を被って人々を欺いてきただけなのではないのだろうかと。
「……マサキ君は、どうしてなんだろう」
頭上に覆いかぶさる天蓋から目を離し、男性がいた方角に戻す。男性とマサキ君は近くのカフェにでも入ったのか、もうそこに二人の姿は見えない。
クールで冷静で、見方によっては冷淡なイメージさえある彼が真っ先にあのプレイヤーへ駆け寄ったのは意外なことだったけれど、だからこそ、彼がどんな理屈に基づいて行動したのか、少しだけ興味を覚えた。
わたしはウインドウを呼び出すと、端に表示されている時間を確認した。マサキ君が向かってから、もう二十分になる。
「まだかな……」
呟いて、わたしは徐々に人通りの増えてきた通りを見つめる。再び物思いに沈んでいく視界の中で、どこか見覚えのある茶色のケープと三本線のペイントがこちらを覗いていたことなど、その直後には忘れ去っていた。
「ヤ、待たせたナ、マー坊」
「確かに、お前にしては遅かったな、アルゴ」
転移門広場に隣接した小さなカフェの一角で、マサキはカップを啜りながら来訪者を迎えた。彼の視線の先で、鼠のアルゴは勘弁してくれとでも言いたげに両手を振り上げる。
「仕方ないだロ。くつろいでる最中に急に呼び出されたオレっちの身にもなってくレ」
「それが仕事だろう?」
「やれやレ、人使いの荒い依頼人を持つと大変ダ」
諦めたように息を吐いて、アルゴはマサキの対
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