アインクラッド 後編
一人ぼっち×一人ぼっち×一人ぼっち
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の部分に目をやった途端、分かったとばかりに頷いた。
「結構派手に亀裂が入ってるわね……。ちょっと貸して」
リズは半ば取り上げるように蒼風を手に取り、軽くクリックした。きっと、武器のポップアップウインドウを確認しているのだろう。やがて、満足そうに頷いて顔を上げる。
「オッケー、大丈夫。余裕で修理できるわ。必要素材……も、これなら簡単に手に入るはずよ。何なら、ウチで仕入れる?」
「いや、それはいい。こちらで用意する」
「そ。なら後で素材をまとめて持って来て。そしたら直すから」
「ああ。分かった」
商談が成立したのか、リズは蒼風をマサキ君に返した。彼はそれを受け取り、「また来る」とだけ言って踵を返す。慌ててわたしがそれを追おうとすると、後ろから「頑張んなさいよ!」と言う声と共に背中をはたかれた。そんなことになるとは露ほども考えていなかったわたしは、突如背中に発生したエネルギーに対処できずにつんのめる。その瞬間、咄嗟に目前の何かに抱きついて転倒だけは回避。犯人に対して抗議の声を上げる。
が、しかし、彼女は顔に浮かべた笑みを更に満足げにしながら悪びれることもなく店に戻っていった。「やっぱりお似合いよー!」と、ウインクのオマケまでつけて。一体彼女は何がしたかったのかいまいちよく掴めないわたしは、首をかしげながら歩き出そうとして――ふと、気がついた。今、わたしが抱えている物は何だったかと。
目線を落とし、徐々に上げていく。男性のものにしては細めで色白、あまりゴツゴツとはしていない手。薄く青みがかった地に鮮やかなブルーの細かいチェックが入ったワイシャツと、それに包まれた、触れると分かるスラリとした腕――。
「……で、いつまでそうしているつもりだ?」
そして、長めに切り揃えられた前髪と理知的な印象の眼鏡の奥から覗く、どこか冷たい光を湛えた切れ長の瞳から発せられた視線とわたしのそれが交錯した瞬間。いつもと同じ、感情を一切感じさせない声色が頭上から降ってきたのだった。
「えっ!? あ、えっと、その、えぇと……ほら、アレ!!」
反射的に、わたしは飛び退いてでたらめな方向を指差した。これから何て言おうとか、もっと上手い誤魔化し方はなかったんだろうかとか、そもそも誤魔化す必要ってあったんだろうかとか、自分の行動選択に対する後悔と今後に対する不安とが冷や汗となって背中を流れる。マサキ君が胡散臭そうな視線を最後に残してそちらを見やり――そんな時だった。
「――お願いします! 仲間の……仲間の仇を取ってください!!」
わたしが差した指の先で、突如一人の男性プレイヤーが涙声を張り上げたのは。
「……え?」
「ここにいろ」
あまりに出来すぎたタイミングでのことに驚くわたしに一
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