第三部龍州戦役
第四十六話 運命の一夜を待ちながら
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考も追い出す
――だ忌々しい事だが独力でなにもかも実現できるほどこの世は明快なものではない。誰も彼もが面倒をこなさなければ生きられない。
「閣下、ひとつ提案があるのですが――」
相手を傷つけないように、此方が主導権を握る事ができるように新城は言葉を紡ぐ。
――伊達に何もかも貰い物・借り物で生きてきたわけではない。この程度の面倒をこなせなくては話にならない。何しろ僕はこれからたまらなく愉しい地獄の夜へ五千の兵達を引き連れなくてはならないのだから。
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同日 午後第五刻 集成第三軍 先遣支隊本部
先遣支隊 支隊長 馬堂豊久中佐
古参の少尉二人が聯隊長の前に並び。敬礼を奉げる。二人とも、聯隊鉄虎大隊の所属であった。片方は腕を吊っており、もう一人は頬に止血帯を巻いている。
「聯隊長殿、軽傷者の内、行動に支障がないもの達が復帰しました。将校2名、兵8名です。
兵達は原隊に復帰しております」
「ご苦労、君たちも聞いているだろうが、日没後は鉄虎大隊にまた苦労をしてもらわねばならない。君たちは大隊本部付に転属してもらう、精々頭をすっきりさせておきたまえ」
にこやかに馬堂聯隊長は名誉の負傷を受けた二人の勇士に笑いかけた。
「あれこれと面倒な仕事だからね。今のうちに休んでおきなさい」
二人の将校が本部天幕をでると彼らが尊敬の念を示していた柔らかな物腰をした指揮官は瞬く間に消え去った。
馬堂聯隊長は折り畳みの椅子に深く身を沈めながら大きく伸びをし、大きく欠伸をした。
「あー、これでようやく頭数が揃ったか。先遣支隊の編成もようやっと済んだし、これで休めるかな」
副官である米山も黒茶に口をつけながら書類の束をめくりながらいった。
「休むのも軍務の内です。まぁ部隊の選抜自体は既定路線ですから問題ありませんが」
部隊の選抜は基本的には砲兵大隊と輜重・給食部隊を司令部に預けるだけである。第十一大隊も似たようなものであるが、両部隊を合わせれば浸透突破に参加する兵力は三千超近い規模になる。
兵を休ませ、作戦に必要な物資を算出し――ようやく作戦開始の準備が整いつつあった。
「――最大にして最後の問題は第十一大隊の面々ですね、彼らとの調整も最後まで気を抜けません。」
と大辺首席幕僚が薄い唇をなぞりながら言う。
佐脇少佐をはじめとする第十一大隊の将校団と打ち合せも念入りにしなければならないし
第十一大隊の様子を秋山剣虎兵幕僚と査閲し、自身の存在を第十一大隊の面々にも示さなければならない。
結局のところ、あれこれと気を使わなければならないのである。
「あと一刻程で佐脇少佐の第十一大隊と合流します。
それまでは聯隊長殿も少し休まれてはいかがでしょうか。」
「・・・・・・すまんな。」
簡易寝棚へいそい
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