第三部龍州戦役
第四十六話 運命の一夜を待ちながら
[4/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
佐は先遣支隊を指揮し、〈帝国〉軍防衛線へ浸透を敢行せよ。
可能な限り戦闘を避け索敵を行い、第三軍に相対している旅団本部・及び師団司令部を捜索し、撃破するべし。
以後は別命があるまで索敵を継続しながら敵海岸堡を目指し浸透を再開。
司令部への伝達は半刻に一度を目安に支隊長の判断で行うように。
なお、第十四聯隊、及び第十一大隊の留守部隊は第三軍司令部直轄とする。
――以上だ、速やかに準備にかかれ、行動開始は午後第八刻だ」
「はい、閣下」
二人の青年将校は軍司令官に敬礼を奉げて退出した。
――先遣支隊か。味も素っ気もない名前だが――
自然と笑みが浮かぶ。
――俺がまた第十一大隊を指揮するのは、中々面白い話だ。ほんの一夜とはいえまたもや一軍の運命を担うのはとてもとても面白い話だ。あぁ畜生め、いやはや人の世と言うものは――
そこから先を何というべきか言葉を探し――自分の思考が迷走を始めた事にきづき、豊久はまたも笑みを深めた。
・
・
・
同日 午後第五刻 近衛衆兵第五旅団本部
近衛衆兵鉄虎第五〇一大隊 大隊長 新城直衛少佐
「――集成第三軍の前進は停止した。」
五十過ぎの眠たげな顔つきをした男が云った。
近衛衆兵第五旅団長――実仁少将の後を継いだ美倉准将だ。有能とも無能とも聞かない、だからこそ近衛衆兵で准将閣下の地位にあるのだろう。
「我々も第三軍があれ程の損害を受けた以上は状況を把握しなおし、態勢を整える時間が必要だ。まったく、あの竜は随分とやってくれたものだ」
火力支援を潰された第三軍は序盤の猛攻で敵の防衛線を後退させた事によって逆に〈帝国〉軍に火力を集中させてしまい、その攻勢は頓挫してしまった。
――明日はどうするつもりなのだろう?また明日になればあの爆撃を幾度も受ける事は分かりきった事だ。だが、この戦の総司令部である龍州軍司令部は作戦中止を命じる事はなく。麾下部隊は皆行動を継続している。
新城は内心の思いを出すことはなく美倉に視線を向けた。
「僕が受けた命は閣下、貴方の旅団と協同して作戦目的を達成せよと云う事です」
新城の言葉に頷いた准将が現状の説明を始める。
「現在、我々が圧迫した敵はこの道を約三里ほど進んだ地点で防御態勢をとっている。
規模は大隊程度。不可解な事に方陣を組んではおらずある程度の補充兵を受け取った兆候もある。我々は明払暁に攻撃を再開するつもりだ」
――成程、数の優位に頼って芸のない攻め手をかけ、ようやく崩れかけた所で龍兵を恐れて再編成の時間を与えているわけだ。確かに士気が落ちる事は避けられないだろうが、それを統制するからこその将校だろうに。
新城は内心、舌打ちをするが今回もまた選択の余地はほとんどない。またもこの旅団に振り回されるのかという愚痴めいた思
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ