第三部龍州戦役
第四十六話 運命の一夜を待ちながら
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に成功すれば一個大隊で一個連隊を蹴散らす程に強力であるが過信しすぎるのは大いに問題がある。
北領の英雄は凄まじい速さで投入しうる戦力の再確認と評価を行う。
――こちらは工兵を除く後方支援部隊と砲兵大隊を置いていくし、第十一大隊にも同様の要請を行わざるを得ない。
不本意ではある、単純に豊久が砲兵将校として火力戦を主眼に置いているからだけではない。剣虎兵部隊による多勢相手の伏撃を決行する際の致命的な弱点である戦力の分散に対する補強案として他兵科部隊による退路の確保、別戦線の構築による戦力の吸引などを実践する事が第十四聯隊の編成が意図したものである。
事実、北領で戦果を上げた第十一大隊は三個大隊を潰した引き換えに戦闘力を喪失する憂き目にあった。
これは大隊本部の無能をしめるものでは断じてない、寡兵で多勢を駆逐すると言う事は部隊が拡散せざるを得ないという事である。
つまるところ、剣虎兵は、騎兵と同じく非常に強力であり、そして非常に脆いのだ。多大な戦果を挙げ、北領の戦地で果てた伊藤大佐の第十一大隊が残した戦訓であり、故にその戦訓を活かす為に実験的に編制された第十四聯隊であり、実際として消耗を抑えて敵の(火力が低いとはいえ)諸兵科連合部隊を壊乱せしめた事は戦訓の活用に成功したと言えるだろう。
そもそもからして強力なのだから日の昇らぬうちに決着をつけるなら剣虎兵二個大隊にそれぞれ銃兵一個大隊の支援をつければ十分に過ぎる。
――つまるところ、万全でなくても可能である、か。
「はい、閣下。導術兵の増強と第11大隊の采配を私に預けて下さるのならば、試す価値は十分にあります」
脳内で弾いた|十露盤≪そろばん≫の結果をもう一度豊久は確認する。
上手く成功すればよく整備された――それこそ〈皇国〉軍以上に――軍の組織の神経を寸断する事が出来る。それは軍隊にとって致命的なものであり、我が聯隊と第十一大隊にはそれを成し遂げる可能性がある。
暫くぼそぼそと参謀達と会話を交わし、西津司令官は再び此方へ向き直った。
「導術兵は疲労が激しく、其方に回せるものは居ない。だが、第十一大隊は貴様の先遣支隊の指揮下に預ける。第三軍の剣虎兵をすべて集中して用いる事にする。
――異論はないな、佐脇少佐」
有無を云わせぬ口調で西津中将が確認を取る。
「はい、閣下」
佐脇少佐は僅かに顔を顰めたが、直ぐに頷いた。さすがに剣虎兵を集めて使うのならば豊久に任せる方が妥当だと考えたのだろう。
それを確認すると老将は副官を呼び、命令書の口述筆記を用意を行わせた。
「――兵力部署を発令する。馬堂豊久中佐は可及的速やかに独立混成第十四聯隊、及び独立捜索剣虎兵第十一大隊より部隊を選抜し夜間浸透突破を敢行する部隊を編成せよ。
以後、編成された部隊を先遣支隊と呼称する。
馬堂中
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