暁 〜小説投稿サイト〜
或る皇国将校の回想録
第三部龍州戦役
第四十六話 運命の一夜を待ちながら
[2/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
するしかありますまい」
 ――結局は目の前で動く現実に対応するしかない。俺は第十四聯隊の聯隊長なのだから。
 司令部が置かれている天幕群へ向き直る。
「――行きますか」
 ――さてさて、果たして鬼が出るか空飛ぶトカゲが出るか。あ、両方ですね分かります。



 どこか不機嫌そうな司令部の面々から命じられた事は二人の若き佐官が予想した通りの事であった。
「夜襲――ですか」
第十一大隊は戦歴を考えれば極めて当然の命令であるし、第十四聯隊もその成り立ちを考えれば驚くようなことではない。元々、独立混成第十四聯隊は剣虎兵部隊と銃兵・砲兵の共同運用により戦果の拡大と損耗率の低下の効果をどの程度まで実現出来るかを試す実験部隊でもある。そして、その効果を先の戦いで示し、同時にその練度も相応の物であることを証明したのである。
 
「そうだ。貴様らの有する剣虎兵部隊を投入し夜間の反撃に転じ、中央部の防衛線を構築する聯隊を壊滅させ、明払暁に第三軍主力を投入し敵の戦力が半減した敵猟兵旅団を突破、敵の橋頭堡に向かって突進する。そして明日の昼までには決着をつけるつもりだ。何か質問はあるか?」
 むっつりとした戦務主任参謀である荻名中佐が二人の若手佐官に尋ねる。
「宜しいでしょうか」
 馬堂中佐が軽く手を上げると荻名中佐が頷いた。
「言ってみろ」

「私は防衛線の前衛部隊を対象とせず、夜間浸透突破による後方の攪乱・および指揮系統の破壊を提案します。〈帝国〉は導術を利用しておらず、導術を探知するのは飛龍のみです。であるからには我々は剣虎兵の夜間行動能力と戦闘導術部隊による導術探索を活用することでほぼ一方的に夜間の活動を行うことが出来ます」
 ――あぁ畜生、どうしてこんな自分を死地に送り込むような事を言っているのだろう?
 豊久は内心舌打ちをしながらも流暢に弁舌を振るう。
「敵の哨戒網に勘づかれずに浸透し、敵の上級司令部を撃破することで敵の指揮系統を破壊する事ができます。これをうまく利用すれば敵の火力を機能不全にすることも可能です。
明日の払暁前に軍主力が攻勢を開始すれば敵の戦線を突破し、運が良ければ敵予備隊の揚陸前に橋頭堡を占領する事も十二分に可能です」
 参謀的な口調で持論を述べる青年中佐の言葉に淡々tの宿将は尋ねる。
「成功する見込みはあるのか?」

 ――浸透突破に必要なのは足の速さと隠密性の保持だ。それらの要素を優先しなければならない為、砲を持ち込む事は出来ない。であるからには剣牙虎を用いた白兵戦に特化した編成になる。剣牙虎は当然ながら弾が当たれば普通に死ぬし、正面から戦列歩兵の斉射を受けたらたちまち潰乱してしまうのは騎兵と同じだ。長引いたら軍主力が動いたとしても後方で包囲殲滅をくらう可能性も十分ありうる。剣虎兵の奇襲は一撃
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ