影と絶
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うに思える。
何人かが慌てた様子でメールを打っているのは絶剣を知っているからだろうか。
俺がその広場に降り立つと、その音に気がついたのかユウキはそのアメジストのような澄んだ赤紫色の目を開き、無邪気に笑った。
同時に俺が来たことに気づいた周りのプレイヤーたちがざわめく。裏方に徹しているとはいえ、ある程度は名前が売れているらしい。……一回だけ、詩乃に言われて参加した月例大会で優勝したのが原因かもしれんが。
「違和感はないか?」
「うん! 下手すると前より調子がいいかもねー」
完全にネットワーク上の存在となったユウキ以上にVRに馴染む人なんていないだろう。メディキュボイトを使っていたことより強くなっていることは間違いない。
「それはよかった。それでルールはどうする?」
「んー……リンの強さがわからないんだよねー」
「なら純粋な剣技だけ戦うか。それでいいか?」
魔法と鋼糸を織り交ぜて戦うのが俺のスタイルだが、ユウキは簡単に引っ掛かりそうなのでやめよう。というかやめたい。SAOが俺のVRMMOの根幹となっている以上、剣だけでデュエルしたいと思うのだ。
「うん、いいよ。飛行はどうする?」
「無しで頼む」
そう言いながら俺は翼を消した。
「わかった。楽しいデュエルにしようねー!」
ユウキも同じく翼を消した。爛々と光る無邪気な瞳には抑えきれない闘気が見て取れる。
先程メールをしていた人たちが呼んだのか、少しずつ人が増えてきている。しかし、俺には目の前のユウキ以外を意識から外した。
ユウキはもう一度無邪気に笑うと片手を振り、慣れた手つきでウインドウを操作し始めた。
そして
Yuuki is challenging you
という文字の羅列が最上段に輝くデュエル申し込みウインドウが少々派手な効果音と共に登場した。
オプションは当然のように全損モードが選択されている。
拒否するような理由がないので、当然選択したのはOKのコマンド。デュエルウインドウが消失し、代わりに10秒のカウントダウンが開始された。
ユウキが右手で左腰に下げた透き通るような紫色の剣を抜き放つのを見ながら、俺は両腰に下げた剣を二本引き抜いて両手にそれぞれ一本ずつ握る。
周囲に響き渡る涼やかな音の余韻と共に思考を戦闘へと切り替えると右手に持った剣を少し前に突き出し、左手に持った剣を肩に担ぐという構えを取る。対するユウキは剣を中段に置く正眼の構え。
そしてカウントがゼロになり、目の前にDUELという文字が一瞬だけまたたくと即座に地面を蹴って跳び出した。
俺もユウキもスピードタイプなのも後押しし、最初に開いていた10m程の距離が一瞬で食いつぶされ、ゼロになる。
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