心の強さ
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染していなかったら……。もし、れば、たら……。いくらでも後からならば言える。しかし、それはもはや取り戻せない過去だ。
「……そんな顔をしないで、燐」
そんなことを考えていたらユウキが話し掛けてきた。
「ボクは確かに病気で家族と一緒に暮らして、学校の友達と遊んで、大人になったら結婚して……そんな普通の幸せは奪われたよ?でも、ボクは今幸せだよ。普通とはちょっと違うけど、でもこうして生きてる。病気のおかげで明日奈たちに出会えた。それに……す、好きな人とも出会えた。だから……これ以上を望むのは贅沢だと思うんだ。だから大丈夫。燐がくれた幸せでボクは満足だから」
「……そうか」
ユウキの言葉を聞いてそれ以上のことは言えなかった。
心の中の悲観、絶望。そういったものを受け入れた上で、そう言い切れるユウキは強いと思ったからだ。
詩乃と同じく弱い部分を受け入れて次に歩むその強さ。俺が彼女たちに惹かれたのはそのあたりかもしれない。
「もう大丈夫。だからほら、早く帰らないと風邪引いちゃうよ?」
「そうね。じゃあ帰りましょうか。……ユイちゃん、ごめんね?あんまり見せてあげられなくて」
「いえ、大丈夫ですよ、ママ。今日は楽しかったです」
空気を読んで黙っていたらしいユイを明日奈は気遣いつつ立ち上がる。
「じゃあ、帰ろっか」
明日奈のその言葉にユイとユウキが揃って元気よく返事をするのを聞きながら軽く首肯した。
ノリが悪いだのなんだのとブツブツ言われながら紫色に染まった空の元を帰宅の途に付く。
このまま幸せな日常が送れればいい……そう思った。
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