第七十六話
[3/3]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
で玉龍を牽制する。
そして、玉龍の頭に飛び乗って髭を掴んで無理矢理にしがみつく。
「おのれ、放さぬか神殺し!」
「やなこった。この状態が、一番使いやすそうなんだよ!」
俺はそう言いながら全力で掴まり続けて、言霊を唱える。
「今ここに、我は太鼓を打ち鳴らす」
その瞬間、虚空からポン、ポン、と太鼓の音が鳴り出す。
「なんだ、この音は・・・」
「我は音に合わせて術を使い、音の数で狸を使い分ける」
玉龍が訝しげにしているが、俺は気にしない。
そして、五回打ち鳴らされたところで音は止まる。
「五の音は布。汝を異界へと導く、布の狸!」
そこで、俺の手に巨大な布が現れる。
その布はどんどん大きくなっていき、玉龍を覆えるほどになる。
そして、その布を掴んで玉龍から跳び、布を一気に引き下ろす!
「落とせ、蚊帳吊り狸!」
そして、布が玉龍を覆った瞬間・・・その厚みは消え去り、再びもとのサイズへと戻る。
「ふぅ・・・これで一旦はよし、だな」
俺はそう言いながら地上に降り、お守りになってもらっていたリズ姉を取り出す。
「なんだ、今の権能は」
「本陣狸大明神から簒奪した権能。多分だけど、狸系妖怪を使役できるんだと思う」
思う、というのはあまり自信がないからだ。
いや、多分あってるんだけど・・・どこまでなのかは、まだ分からない。
「そうか。で、ここからどうするんだ?」
「いつまでも玉龍を異界に閉じ込めておくのは無理があるから、俺も向こうに行って直接倒してくるよ」
「私は?」
「まず間違いなく、いくと同時に死んじゃうと思う」
「なら、残るとするか。武双、ちょっとこっちを向け」
「ん?何・・・」
その瞬間、俺の唇がリズ姉のそれによって封じられた。
ついでに、リズ姉の舌が入ってきて・・・
「って、何やってるの!?」
「治癒の術だ。これで、万全の状態で戦えるだろう?」
確かに、怪我は全て治っていた。
「でも、さ・・・こういうことって、本当に好きな人に対してするもんじゃないの?」
「さすがに、それくらいは私でも分かってるぞ」
・・・え?
ってことは・・・
「ほらほら、さっさと玉龍を倒してこい」
「あ、はい。分かりました」
俺は思考を強制的に中断され、なんだか釈然としない気持ちで異世界に落ちた。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ