第四章
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かけた。
「あれを出してくれ」
「ええ。佳代子」
「何?お母さん」
「はい、これ」
こう言って娘に対してあるものを差し出してきた。見ればそれは二つあった。
一つは大きな熊のぬいぐるみ。そしてもう一つは。
「チケット・・・・・・」
「今度の舞台のやつだ」
父が娘に説明した。
「今度のな。御前が行きたいと言っているな」
「お父さんとお兄ちゃんの舞台の」
「そうだ」
娘に対して告げるのだった。
「その舞台のチケットだ。行くな」
「ええ、勿論よ」
明るい笑顔で父の言葉に応える佳代子だった。
「絶対に行くわ。退院して」
「もうすぐだからな」
微笑みを作って娘にまた言う白峰だった。
「もうすぐだからな。それは」
「退院したら。最初はその舞台を観て」
「次はどうするの?」
「退院祝いして」
今度は母の問いに答えていた。
「退院祝い。いいわよね」
「ええ。勿論よ」
彼女もまた笑顔を作っていた。しかし彼女のそれは夫のものと比べると遥かに苦しく辛いものがあった。強張ってしまうのを必死に動かして。そうして作っていた笑顔であった。
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