空白期 第6話 「大切な家族」
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に割り込もうと口を開き始める。が、叔母の方が先に動いた。
「先に謝っておくよ。すまない」
言葉が耳に届いたかと思うと乾いた音が響き渡った。
突如として行われたレーネさんのシグナムの頬への平手打ち。これは彼女以外に驚愕の表情を浮かべさせ、場の空気を凍らせるには充分な出来事だった。
「……あんた、いきなり何すんだ!」
「私は先に謝ったはずだよ」
いち早く立ち直ったヴィータが激昂するが、レーネさんは淡々としている。いや、普段よりも感情が見えない冷たい顔をしていると言ったほうが正しいかもしれない。
「先に謝ったからって人を叩いていい理由になるかよ!」
「そうだね……だが彼女はこの子を傷つけた」
叔母の言葉によって、俺は闇の書事件の際に起きたシグナムとの決闘が脳裏に蘇った。ヴィータ達の顔には、先ほどまでと打って変わって申し訳ないといった気持ちが現れている。
「私は仕事ばかりしているダメな保護者だ。だがこの子は兄さんと義姉さんが残した忘れ形見であり、私の大切な家族だ。家族を傷つけられて何も思わないほど私は腐った人間ではない」
事件中は顔を合わせる時間がなかったこともあってろくに怒られることはなかったし、事件後もこれといって何も言ってこなかった。
そのため俺は叔母は怒っていないのだと思っていたのかもしれない。だが冷静に考えれば、ジュエルシード事件以前に危険なことに首を出さないように忠告していた叔母が怒らないはずがないのだ。俺の考えが甘かったとしか言いようがない。
――……これまでレーネさんが真剣な顔で、家族であることや俺のことを大切にしていると言ってくれたことはなかった。だから初詣の際には、自分はシュテル達と同じような存在で形だけ家族なのではないかと不安にもなった。でも今確かに彼女は俺のことを大切にしているのだと言ってくれた。
嬉しいと思っている自分がいる。ただ現状の空気を考えれば芽生えた気持ちに浸っている場合ではない。シグナムだけが責められるのは間違っている。シグナムは何度も手を引くように言っていたし、そもそも事件に関わったのは俺の意思だ。真っ先に平手打ちなり怒鳴られるのは俺のはず。
「レーネさん……」
「いいんだ夜月」
「何がいいんだだ。剣を交えることを選んだのは俺の意思だ。お前だけ責められるのは間違ってる!」
「だとしてもだ!」
力強く発せられた言葉に思わず口を閉じてしまった。シグナムは俺が口を閉じたことを確認すると、こちらに嬉しさや申し訳なさの混じった笑みを向けて続ける。
「結果から言えば私が加害者でお前は被害者。そして、お前は正しいことやろうとしていた」
「だけど……」
「それに……私はあの日からずっとこの日を待っていたんだ。お前も主はやても、そして他の者達
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