その名が意味するものは
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(全く・・・面倒な役を俺に押し付けるとは、腹が立つな)
食事を、街外れの小屋―――――“白蛇の社”に運んで来い。
“呪われし蛇髪姫”に近づいて害がないのは、娘に1番歳が近い人間だけだから。
魔法が使えるお前なら、娘に何かされても反撃出来るだろう?
ザイールはそう言われ、白蛇の社に食事を運ぶ為、足を進めていた。
(“呪われし蛇髪姫”か・・・馬鹿馬鹿しい。そんな迷信を信じるなど幼稚だな。それに・・・)
足を止めたザイールは、街の人間に言われた言葉を思い出す。
全てを聞き流し忘れようとしていたザイールが、完璧に頭に残した一言。
(もしもの時は、殺しても構わない――――――か)
無意識のうちに、唇を噛みしめる。
あっさりと殺しても構わない、と言ったあの男に対して、怒りを覚えた。
“呪われし蛇髪姫”とは、今日が初対面だというのに、初対面の人間の殺害の有無を勝手に決めた他人が憎かった。
「馬鹿馬鹿しい」
自分に言い聞かせるように呟いて、ザイールは片手で社の古びた扉を開ける。
キィィ・・・と軋む音が響いて、中にいた人影がビクッと震えた。
それと同時に、人影から生え、ふわふわと自由に動いていた“それ”が動きを止め、だらりと下がる。
「あ、あの・・・何か、御用でしょうか?」
か細い声だった。
今にも消えてしまいそうな、それでいて通り、独特の響きを持つ美しい声だった。
姿は、見えない。
蝋燭も電球もないこの空間は暗く、僅かな日光が室内を照らすが、少女の姿は見えないままだ。
「・・・食事を持ってきただけだ」
言ってから、無愛想だったかとザイールは少し後悔する。
ただでさえ街の人間に忌み嫌われているのだ。同年代で蛇髪姫の呪いを信じていない自分くらいは優しい言葉の1つや2つかけてやればよかった、と自分でも何故か解らないが後悔した。
「そう、ですか・・・でしたら、そちらの机の上に置いて下さいませんか」
「解った」
少女が指さした先にある机に食事を置き、ザイールは声のした方に目を向ける。
びくびくと震える姿があった。
怯えさせてしまうような事はしていないんだが、と思いながら、ザイールは小さく会釈する。
「一応名を名乗っておこう。俺はザイール・フォルガだ。覚える必要はない」
そう言ってから、「お前の名は?」と聞こうとして、口を噤む。
人に何かを聞くには高圧的すぎる。相手は自分と同年代(確かザイールより年下だと彼の母親は言った)の少女なのだ。
あまり高圧的では怖い思いをさせてしまうかもしれない。
もしかしたら、びくびく怯えているのも俺の言い方が高圧的だからかもしれんな、とザイールは思い、改善を心がけよう、と思った。
「ザイール様、ですか」
「いや、様はいら
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