その名が意味するものは
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るのは大変だった、と少女は己の身を抱きしめて思う。
「誰か・・・助けてっ・・・」
自分でも気づかないうちに呟く。
でも、その言葉で助けてくれる人がいない事を彼女は知っている。
何度も何度も、何十回何百回と声に出して、その声が届いて事なんてなかった。
「入るぞ」
――――――――なかった、のだ。
「!」
びくり、と少女は震えて反応する。
この声は先ほど食事を運んで来た青年―――――ザイールのものだ。
無言で入ってきたザイールの手には文庫本サイズの箱が握られている。
「あ、あの・・・まだ、何か?」
恐る恐る問うが、答えはない。
こちらの不安に気づいているのかいないのか、ザイールは箱を開けてテキパキと何やら準備をしている。
その表情は、真剣だ。
(一体何が・・・髪を切られてしまうんでしょうか。切ってもすぐ伸びる事は皆様ご存知でしょうに・・・)
どこまでも伸びる蛇を短くしてしまえばいいんじゃないか、と言った町民がいた。
それに賛成した町民達は少女の長い髪を、ボブヘアになるまで切ったのだ。
が―――――切った髪は瞬時に蛇となり、地面を這うような動きと共に伸びていく。
そして、切る前と全く変わらない長さで動きを止めた。
切った髪は床に落ちているのに、長さは変わらない。量も変わらない。
それは、彼女を更にバケモノと思わせる現象だった。
「動くな」
短く発せられた言葉に、自然と体が硬くなる。
左手に瓶、右手にピンセットか何かで挟んだ正方形の何かを持ったザイールは、瓶の中身を正方形の何かに染み込ませた。
(まさか毒薬ですか!?・・・いいえ、慌てる必要はありません。蛇に毒はつきもの。私に毒は通用しないのですから)
社に毒蛇が5匹ほど放たれた事もあった(どこで集めてきたのかは謎だ)。
が、毒蛇は少女に攻撃するどころか、逆に懐いてしまい、今でも時々社に来ている。
その時少し噛まれたが、毒が回る事は無く今もこうして元気に生きているのだ。
「・・・そこか」
ザイールの小さい呟きが聞こえる。
少女が何が来ても大丈夫なように思わず身構えた、瞬間。
「っ!」
じわり、と痛みが走った。
ぎゅっと閉じていた目を開くと、自分の左足首辺りに正方形の白い布のようなものが当てられている。
「痛むだろうが堪えてくれ。細菌が入るよりはマシだろう」
呟いて、布を外す。
肌に当たっていた布の一部分には赤黒い血が付いていた。
(そういえば・・・今日、怪我しましたっけ)
それと同時に少女は思い出す。
朝食を運んで来た若い娘が、置き土産と言わんばかりにナイフで斬り付けたのだ。
す
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