その名が意味するものは
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ない。呼び捨てで構わん」
改善を心がけようと思ったばかりなのに、とザイールは小さく溜息をつく。
街の長である父親の言葉ばかりを聞いていた為か、その口調が移っているのだ。
高圧的なのも父譲りか、と頭を抱えそうになる。
「ダメです!」
「!」
が、頭を抱える前に少女が叫んだ。
思わず目を見開いて少女に目を向けると、少女は捲くし立てるように続ける。
「目上の方を敬称付きで呼ぶのは当然です!私は誰よりも目下で身分が低いのですから、皆様を敬称付きで呼ぶのは絶対なのです!それに、貴方様は町長フィガ様の御子息。呼び捨てなど出来ませんわ!」
ずい、と少女がザイールに近づく。
驚いたザイールは半歩下がる。
光の下、少女のローズピンクの髪が揺れた。
視界に入った紫を帯びた桃色に、ザイールは無意識で呟く。
「・・・綺麗だな」
「え?」
「その髪色」
突然の言葉に、少女はぱちくりと瞬きを繰り返す。
前髪を眉の上で、顔の両側にある髪を肩ぐらいの高さで真っ直ぐ切り揃え、それ以外を長くストレートで下ろした髪型(いわゆる姫カットだが、当時のザイールは姫カットという言葉を知らなかった)で、僅かに開いた扉から吹く風にサラサラと揺られる。
「そっ・・・そんな事ありません!私の髪は呪われているのですから、綺麗な訳がないのです!」
即座に少女はザイールから距離を取り、その場にしゃがみ込む。
カタカタと小さく震える体は細く白い。怖いくらいに白いのはきっと、外に出る事を禁じられ、まともに日光を浴びていないからだろう。
伏せられた目は垂れ気味で黒く、白い肌によく映える。所々小さく破れたワンピースを纏い、足は素足だ。どこかで怪我でもしたのか、乾いた赤黒い血が付いている。
「もう帰ってください!貴方は食事を運びに御出でなさっただけなのでしょう?でしたら、既に用件は済んでいる筈です!帰って下さいっ!」
少女の叫びに、ザイールは少し戸惑う。
が、震える少女を見て、小さく頷いた。
「・・・解った」
言うが早いが、ザイールは扉を開けて出ていく。
その後ろ姿を見つめる少女は、悲しげに俯いた。
(また・・・またですわ。一体何度同じ事を繰り返せば私は学習するのでしょう・・・こんな言い方では、誰も私の傍にはいてくれない・・・私は永遠に孤独でいるしか、ないのでしょうか・・・)
じわり、と涙が滲む。
苦しかった。悔しかった。
同じ人間として生まれてきたのに孤独でいる以外の道がない事が苦しかったし、誰かに傍にいて欲しいのに人を拒絶する自分が悔しかった。
「・・・ありがとう。あなた達は、私の傍に居てくれるのですね」
シャァ・・・と小さい声を零して、蛇が少女の頬を伝う涙をチロリと舐める。
“彼女の頭か
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