第一章
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う言ってしまえば。どうしようもないが」
「まことに。誰のせいでもありません」
「病ばかりはどうしようもない」
白峰は天を仰いだ。腕を組み目を閉じてしまっている。だがそれでも天を仰ぐのだった。仰がざるを得ないものが彼にあるのだった。
「こればかりはな」
「まことに」
「まだ。十五だ」
彼は言うのだった。
「十五で。あの病とはな」
「つい一年前まであれだけ元気であったというのに」
「これも天命か」
また天を仰ぐ父だった。
「やはり。これは」
「病は天命ですか」
「そう思うしかあるまい」
無理に自分自身に言い聞かせている言葉であった。
「そう思うしかな」
「ですね。これは」
「次の公演まで持てばいいが」
「お医者様の言葉では難しいとのことです」
市五郎は父とは正反対だった。項垂れての言葉であった。
「それも。もってあと」
「一月か」
「そういったところのようです」
こう父に告げるのだった。
「佳代子は」
「そうか。一月か」
父はその声をさらに沈痛なものにさせた。
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