幼い日の思い出
金色の落とし子
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サスケと会ったときだってそうだった。
ナルトの狭い世界には、姉と火影くらいしかいなかった。
ある日、知らない人間がいきなり自分の世界に放り込まれたとき、ナルトはそれなりにびっくりしたし、警戒もした。
ナルトは姉に向けられる嫌悪の理由を知らないけれども、ただ、嫌われていることだけは知っていて、だから最初のころはイタチとサスケが姉を傷つけるのではないかと恐れ、拒んだ。
でも、今ではすっかり、サスケとナルトは仲が良くなっている。
初対面の印象は会うたび会うたびころころ変わって、良くなったり悪くなったり、うつりかわっていく。
それが人間だという事を、ナルトは覚えていた、知っていた。
そして、九尾は知らなかった。
「どうしたんだってば?」
「…貴様はあほか」
あほという直接的な侮辱に頬を膨らませたナルトは、むくれたように赤い檻の前に座った。
そこは、九尾に襲われてもおかしくないくらいに近く、檻の間から尾を出すことさえもできるのに。なのに無警戒に座ったナルトは、九尾に笑みを見せる。
「なー、お前の名前を教えろってば」
「なぜ、わしがお前みたいな若造に名前を教えなければいけないんだ」
「だからっ、最初に言ったってばよ? 俺、お前と友達になりたいんだってば」
笑顔の金色に、狐はなぜか無性に懐かしくなりながらも答えた。
似ていない筈なのに、なのに似ているように思えてしまう彼に、狐の赤い眼が瞬いた。
「わすれた」
嘘だ、覚えている。けれど、そう、周りからは忘れさられた。
もう何年も呼ばれていない。もうずっと、消えたままだ。
誰もが呼ぶことはないだろう、これまでも、これからも。
あの人が最後に残してくれたその名前だけが、頭の中で反芻していたけれど、狐は知らないふりをしてそう言った。
「忘れたんだってば? なら、思い出せばいいってば」
狐の言葉に、少年はまた、あっけからんと答えた。
今度は、動揺しなかった。
何故だろうか、そう答えると分かっていた気がする。あるいはそう答えてほしいと思っていたかもしれない。
自分で自分がよく分からなくなっていく。
九尾は困惑する頭でうなった。ぐるるという獣の声に、少年は相変わらず臆することなく、まっすぐな目で九尾を見つめてくる。
その視線に、九尾の尾が揺れた。
不思議だと思って。知りたいとそう思って。だから九尾は口を開く。
この少年が紡ぐ言葉はすべてが嘘かもしれないのに、なのに九尾はかけらもその可能性を疑うことをせず、素直に尋ねていた。
「…思い出せなかったらどうする」
「そんときは、俺が名前を付けてやるってば」
「貴様はどうして、どうしてそこまで、わしの名前に執着する」
疑問に、何回目かも
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