幼い日の思い出
金色の落とし子
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恐ろしく思え、九尾は無意識の内に体を震わせた。
そんな九尾の様子に気が付くことなく、ナルトは笑んだ。
「名前を知らなきゃ、友達になれないってばよ!」
思わず、九尾は目の前の檻を掴み、がんがんと揺らした。
威嚇攻撃ではない。もしもこの檻が無かったらば、確実に少年の喉を掴んでいただろう。そう思えるほどの覇気で、九尾は檻を掴んだ。
けれど少年はといえば、少しだけ驚いたように体を震わせ。そしてまた、笑った。
なんだ、この生き物は。
また、そう繰り返した。
九尾は知らない。こんな生きもの知らない。
こんな、弱くて細くてもろくて、すぐに壊れてしまいそうで、脆弱で。なのに、九尾に意気揚々と、こんなにも好意的に接してくる生物なんて知らない。知る筈もない!!
たった一人の、あの人しか知る由もない!!
今は亡き、自分の親の様であったあの人の姿が瞬いた。
ああ、恐ろしい。恐ろしい。
恐ろしいのに、自分よりも数倍大きい獣が居るのに、なのになぜ、何故こんなにも、この少年は九尾を恐れないのか。
無知なのかもしれない。無茶なのかもしれない。
ああ、そうかもしれない。だが、けれど、なぜこの少年は牙をむく狐に笑えるというのだ!! 今の攻撃で死にそうだとか、そんなことは思わなかったのか!!
誰だって気づく。今の威嚇は殺す気であったと。
もしかして気づかなかったのか、ということは鈍感なのか。鈍感であればあればで、何故、この場から逃げない。恐ろしかっただろう、恐れただろう。
来たことの無い場所だ。見たことの無いの場所だ。周りには誰もいない。周りには頼るものが存在しない。
それでも、それなのに、なぜ逃げない!!
疑問が脳を支配して、けれど答えは九尾には出せない。目の前の少年以外に、九尾の問いに対する答えを出せるわけがない。
もう何もかもがわからなくなって、九尾は言葉を出した。
「わしと、ともだちになるきか」
たどたどしく、言葉を紡げなくなったわけではないだろうに、赤子のように不安げに声を紡ぐ。
幾千年もの時を生きてきた同胞たちは、こんな九尾の姿を見たらあざけるように笑うのだろう。けれどそれ以上に、彼等もまた、九尾のようにこの少年を恐れる筈だ。
だって、自分たちは知らない。
こんなふうに近づいてくる生き物なんてものは、生まれてこの方、あの人以外では見たことが無いのだ。
数千年の時を生きていながら、自分でもどうかと思うが、それでもそれが事実だった。
もしかしたら、無知なのは少年ではなく自分たちなのかもしれないと、九尾は酷く矛盾した頭でそう思った。
「そうだってばよ?」
「あったばかりなのにか」
「誰だって、最初は初対面なんだってばよ?」
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