幼い日の思い出
金色の落とし子
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ろきょろと周囲を見回すが、姉の姿はない。
代わりに見えるのは酷く大きな、赤い格子で作られた檻。
何を閉じ込めているんだろう。なんだかひどく気になって近づいていく。
歩くたびに、ばしゃばしゃと水音がした。
足がとられないように気を付けながら進んで、赤い檻の前に立ったナルトは、そういえばと思い出す。
ここから声が聞こえてきた気がする。ということは、何かがいるのかもしれない。
好奇心が彼の青い瞳をきらめかせた。
わくわくと胸を躍らせて中を覗き込んだナルトは、中に入ってる生物に、目を見開いた。
大きい。こんなに大きいのは見たことないと、そう思うくらいの大きさだ。ナルトが五十人いたとしても届かないかもしれない。そう思うくらいに大きい。
種族は狐だろう。こんなに大きくて、赤い毛並みの狐は見たことがないが、だが、大体の形からしてこれは狐だと確信した。
ふと、昔の記憶が頭を瞬いた。
ないなら、つけてあげればいい。
胸がときめいた。
種族名は狐だろう。でもそれは、個体名ではない。
わくわくと胸が高鳴って、見たことの無い生物に触れてみたいと思って。でもそれ以上に、名前をつけられるかもしれないという高揚が、頭の中を渦巻いた。
「お前! 名前はあるのかってば!?」
青い瞳を光らせて、ナルトはそう尋ねた。
つけてあげたかった。寂しくないようにしてあげたかった。
たとえがそれが偽善だとしても、恵まれたものが同情しているだけの感情だとしても、何もしないよりは数倍ましで。そして何より、優しくされてうれしい人間はこの世にたくさんいることを、ナルトは知っていた。
それが、自分の姉と同じような人であることを、ナルトは知っていた。
いきなりの言葉に、その狐は目を見開いて。そして言葉を絞り出した。
「ある」
「あるのかってば!」
少しだけ残念な気持ちになったけれど、ナルトは満面の笑みを浮かべて、その小さな手を赤い狐にさしのべた。
「俺の名前はうずまきナルトってば! おまえは?」
「は?」
「お前、鈍感だなぁ! お前の名前に決まってるってばよ!!」
「は」
勢いよくそう言った子供に、九尾は再度疑問に満ちた声をこぼす。
されど、子供はひるまない。
九尾は眉をひそめた。
名前を、求めている、この九尾に。
誰もが災厄と怖れ、不幸の元凶と罵り、全ての人間から嫌われ、里の人間を何人も殺し、彼の姉を嫌わせる――彼を嫌わせる原因となっている獣の名前を、たずねている!!
なんだ、この生き物は。
確かにそのいきものは、今まで見てきた人間と同じである筈なのに。災厄とも喩えられた九尾ならば、一つの尾をふるうだけで殺せてしまうくらいに脆い存在なのに。なのに、何よりも
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