8-1話
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見たはずよ。 たった一つの驚異でパニックなる群衆は容易く暴徒となる…あれは集団狂気よ」
私はその言葉に諭されて思い出す。
あの同じ人間とは思えない暴走を、ジェニアリーさんは明確に名称として呼称した。
「意味もなく突然膨れ上がったかのような悪意。 意味はなくとも、混乱による不安は他人を罵って痛めつける事で精神の安定を保つために、同じように混乱と不安で動けない人を見つけては暴力の捌け口にする。 醜いけど、あれもまた人間の集団行動よ」
「―――……」
理屈としては…わかる。 人間がそんなに綺麗なものじゃないのはわかっている。 清廉潔白じゃなく…男とか結構エッチな生き物なのだから、悪い面なんて私が想像できないほど醜いものなのだと何となくわかっている。
だけど、それでも生徒なのだ、学生なのだ。 同じように机を並べて勉強した生徒達まで、あんな風に豹変してしまう事が理解しようとしても出来なかった。
「……信じられない? それとも信じたくない? 困ったわね…」
「……ごめん、なさい」
彼女も決して意地悪で言っているわけではなく、第三者の視点としての事実を述べているだけにすぎない。 そして私を案じて諭しているのもわかる。
ただ…いきなりで、私だけが納得できないだけなのだ。
困ったように眉を下げるジェニアリーさんはハーブティーを啜ると、落ち着いた声で話しかけてきた。
「ん〜……りおん。 貴女は、何においても心から信じられるような…そんな存在はいないのかしら?」
「え…それは……」
言われて考えてみる。
身近な人にそういう人がいるかどうか考えた…クラスメート、部活仲間、教師…仲間として考えられるけど疑ってしまえば、信じられるかどうかわからない。
両親は…親は信じられる…だけど親子というある種の距離感にあって、何においても心から信じられる、となるとちょっと違うような気がする…それはきっとジェニアリーさんが言いたい事はそれじゃない。
盲目的にじゃない、義務感でもない、連帯感でもない…それはきっと、他人同士でありながらもとても近くて信頼を寄せて、バカをしても、エッチな事をしていても、何か過ちを犯したとしても、それを許して信じられるような人……そう信じられる幼馴染、だ……。
私の脳裏で顔が浮かんだ。
慣れ親しんだ幼馴染の表情が浮かんで……私の顔が赤くなった。
「ア……アキラ…君……///」
何という事だろう。
大切と言えば大切な、好きだと思っていた幼馴染に対する気持ちを強く強く自覚してしまっている。
答えたはいいが、気恥ずかしくなって私は両頬に手を覆って視線を逸らした。
「そう。 確か彼氏…じゃ、ないんだったっけ? そのアキラって子はりおん
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