8-1話
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のね」
ジェニアリーさんは脇に拳銃を置きながらそんな事を言ってきた。
人の良いお姉さんのような態度を取っているけど…この人は…ただの人じゃない。
人間を喰う怪物の首を落として…飛ぶような跳躍で地獄から私を無理やり連れ去って、獣の囲いから単身突破してのけた。
思い出せばとんでもなくすごい事であり、並大抵の事では実行できる事じゃない。
だが、目の前にいる人の態度に違和感を感じて混乱してしまう。
思い返して、この目で見た自分自身それが信じられない。 だって…今の彼女はとても普通な印象を抱かせる。
柔和で、気遣いがあって、大人らしい落ち着きの女性だ。
しかし―――あの時はもっと…彼女の全てが印象が鋭かった………。
私の中で、よくない感情が燻っている。
彼女に対して……ジェニアリーさんに対して…獣に対する恐怖より、彼女の……その異常性の方が強く意識してしまう。
怪物をも凌駕するその力に…異物に対する拒否反応を起こすように、彼女に対して壁のような距離を作っている。
―――私は、この人を恐れてる。
この人の蒼い髪が…青い眼が……なんでもない普通の態度が……恐ろしく感じてしまう。
まるで恐れる理由を粗探ししてるかのように目線が動く。
力を持った彼女をあの怪物と同列視する目になっているのが自分でもわかる。
なんか、この無意識の思考が浅ましい………結局私も…命を救ってくれた人に拒絶の視線を投げかけたあの人達と同じにすぎない、とそんな風に思えて、自分を嫌悪した。
「……」
沈黙する私を見て元気がないように思ったのだろうか。
ジェニアリーさんは持ち上げたコーヒーポットを少し傾けて、注ぎ口から湯気を揺らめかせた。
「…飲む?」
湯気の向こうで微笑んだ表情を見てわかった。
私がどう思ってるか、棘を持ったこの気持ちをよそに…そっと触れるように接してきてくれる。
あぁ…この人はこちらを気遣っている。
言葉が出ない…だがこくり、と頷いて首肯だけはした。
「カモミールよ。 気分が落ち着くわ」
コーヒーポットから沸いたばかりのお湯をマグカップに注いで、ジェニアリーさんはその上に握り拳を持ってきた。
握り締めた手を開くとその中から……花が落とされた。
中心の花芯が黄色く膨らんでいてその周りに沿って白い花びらが綺麗に並び咲くカモミール…乾燥したものじゃない、生のままの頭花――こんな所で一体どこから…――が数個マグカップの中に落とされた。
そのマグカップに小皿を蓋代わりにして、蒸らして待つ事五分……先ほど嗅いだ甘酸っぱいりんごのような香りが漂ってきた。
「はい、どうぞ」
差し出された
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