第三章
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第三章
「その神が創られた人が過ちなのか」
「それはないか」
「そしてこの世界もだ」
世界についても言った。
「神が創られたもの。過ちであるのか」
「それはない」
メタトロンもそれはないとした。
「その通りだ」
「そしてだ」
神父の言葉は続く。
「神は全てを愛されるな」
「そうだ」
天使は神父の今の言葉もその通りとした。
「愛されている。常にだ」
「愛するものを滅ぼし壊そうとする者がいるか」
神父はその言葉を続ける。
「神はその様な歪な心を持っておられるというのか」
「持っておられる筈がない」
これが天使の返答だった。
「その様なものをだ」
「答えはそれだ」
ここまで話してであった。
「神はその様なことは絶対になされぬ」
「見事だ」
天使もここで言った。
「全てそなたの言う通りだ」
「間違いではないのだな」
「全てそなたが言う通りだ。神は過ちを犯さない」
まずはこのことを認めた。
「そして全てを愛されている」
「私が言った通りだな」
「神父よ、そなたは全てをわかっている」
このことも言ってみせた。
「見事だ。そなたは完璧な信仰を持っている」
「いや、完璧ではない」
神父は今の天使の言葉も否定した。
「私は完璧ではない。その信仰もだ」
「そう言う根拠は何だ」
「私が人だからだ」
だからだというのである。
「完璧なのは神だけ。人がどうして完璧であろうか」
「神が創られたものであろうともか」
「神は人が傲慢になり独善にならぬように完璧でなくした」
「それでなのだな」
「そうだ。人は完璧ではない」
またこの事実を話す神父だった。
「人であるからこそだ」
「そうだな。しかしそなたの信仰はだ」
「完璧ではないにしてもだ」
「見事だ」
今度の言葉はこれであった。
「その信仰、確かに聞かせてもらった」
「そうか」
「その信仰を守れ」
「守りそのうえでか」
「人々に仕えるのだ。それがそなたの務めだ」
彼を見てだ。こう告げたのである。
「わかったな。生きている限りそうするのだ」
「最初からそのつもりだ」
神父の返答は迅速であり謹厳なものであった。
「迷いはない」
「今は、か」
「かつて。若き日は迷いはあった」
このことは認めた。
「しかし今はない。だからこそ私は今ここにいるのだ」
「それもわかった。それならばさらにだ」
「進むだけか」
「進め。神の道を」
それをだと告げた。
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