第百六十二話 ならず聖その十四
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「赤、黒、白、緑、黄、藍、紫、そして灰にはな」
「もう少ししたら全て消えてもらおうぞ」
「互いに潰し合ってもらってな」
「色は互いに混ざれば潰れる」
そうなるというのだ、絵の具に例えての言葉だった。
「だからな」
「色はまつろう者のもの」
こうした言葉も出た、実に忌々しげに。
「まつろう者なぞ消えてしまえ」
「我等の闇こそがこの世のものじゃ」
「色なぞ全て消してしまってな」
「闇で天下を覆おうぞ」
「今度こそな」
こう話すのだった、その闇の中で。闇の中は何も見えない筈であるが彼等だけは何もかもが見えている様である。
そして見えている中でだ、彼等は言うのだ。
「織田信長はここでは倒せなかったが」
「次の機会じゃ」
「そうじゃ、次じゃ」
「まだ手はある」
「その手を打っていくだけじゃ」
「それだけじゃ」
彼等は気落ちしていなかった、今井ましげな口調ではあるが。
そしてその口調でだ、こうも言うのだった。
「安土も出来るがな」
「あの城じゃな」
「天主とかいう」
「伴天連だったのう」
フロイス達南蛮の者達のことだった。
「あの者達のうちにはこちらの手駒にした者もおるがな」
「その者達からも色々と仕入れねばな」
「鉄砲は今より必要じゃな」
「そうじゃな、火薬もな」
鉄砲とくれば火薬だ、それも必要だというのだ。
「あれも買うとしよう」
「そうしようぞ」
「金も銀も幾らでもあるわ」
人によってはそれこそ命よりも大事であるそれについてはだ、彼等は何の心配もしていなかった。それも全く、である。
「それを使ってな」
「うむ、鉄砲を集めようぞ」
「これまで以上に」
「砲もじゃ」
これもだというのだ。
「集めるか」
「あれもか」
「あれも集めるのか」
「そうじゃ、あれも使うのじゃ」
そうしようというのだ、砲までだ。
「そしてな」
「織田信長に使うか」
「いざという時に」
「おそらくあ奴も手に入れる」
織田信長、その彼もだというのだ。
「だからこそな」
「我等もか」
「そうじゃ」
だからこそだというのだ。
「手に入れておこう」
「ではな」
「南蛮から買うか」
「明では既に使っておる」
この国はというと。
「それも大々的にな」
「あの国はまた力が違うが」
「それでもじゃな」
「大砲は多い」
「鉄砲も多いが」
「手に入れて困ることはない」
それは過ぎたるものではないというのだ、大砲は。
「だからな」
「鉄砲も揃えそうして」
「然るべき時に備えるか」
「今のうちにな」
こう話してだった、彼等は闇の中から信長を見つつ鉄砲等も揃えるのだった。闇の中でも動くものは動いているのだった。
第百六十二話 完
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