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美しき異形達
第九話 風の力その六

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「意外ね」
「意外ですか」
「お嬢様みたいだから」
「私はそんな」
「お嬢様ではないのね」
「はい、両親が厳格で」
 それでだというのだ。
「躾に厳しくてて」
「それで喋り方も」
「はい、丁寧にしろと」
 桜は四人に自分の事情を話す。
「教えられてきましたので」
「それでなのね」
「こうした喋り方なのです」
 こう話すのだった。
「私は」
「そうか、まあそれでさ」
 ここで言ったのは薊だった。
「桜ちゃん今はお酒は駄目だよな」
「バイクで来ていますから」
 飲酒運転になる、これは問題外だった。
「それは」
「だよな、だからな」
「私は飲みません」
「あたしもだよ」
 笑ってこう桜に言うのだった。
「それはしないさ」
「私も」
「私もね」
 菖蒲に菊も言ってきた。菖蒲は無表情のままであるが菊は薊と同じく笑顔になってそのうえで桜に対して言った。
「飲まないわ」
「今はね」
「私もよ」
 裕香もだった、微笑んで桜に言う。
「他の娘が飲めないのに自分は、って悪いから」
「すいません、気を使ってもらって」
「いいわ、それにお昼だし」
「昼からビールごくごくもな」
 薊はこのことは苦笑いと共に言った。
「それはよくないよな」
「ちょっとね」
 裕香も今度は苦笑いと共に薊に返した。
「よくないから」
「そうだよな」
「ドイツならともかく」
 裕香はここでこの国の名前を出した。
「日本だからね」
「ドイツはいいんだよな、あそこは」
「ええ、ビールの国よね」
「そうだよな」
 このことを言うのだった。
「もうビール飲み放題か」
「飲み放題じゃないけれど朝から飲んでるわよ」
「おいおい、朝からかよ」
「ええ、食欲がないとビールの中に生卵を入れてね」
 そのうえでだというのだ。
「飲むのよ」
「ビールに生卵かよ」
「そう、それで朝の栄養を補給するのよ」
「その組み合わせまずいだろ」 
 薊は首を傾げさせて裕香に返した。
「ちょっとな」
「痛風よね」
「ああ、朝からビールでしかも生卵中に入れてだよな」
「そうして朝御飯にするの」
「それ絶対にまずいよ」
 お好み焼き、注文した二枚目を焼きながら言う薊だった。
「痛風一直線だよ」
「ドイツは他にもソーセージ、ベーコンにジャガイモの上にバターよ」
「絶対に痛風になるぜ、それ」
「実際ドイツでは痛風は国民病になってるわ」
「だろうな、痛風なあ」
「痛いらしいわね、相当に」
 ここで言ったのは菊だった。
「足の親指の付け根が万力で締め付けられたみたいにね」
「痛いのかよ」
「そうなの、もう歩けない位らしいわ」
「うわ、それは嫌だな」
「ビールは一番怖いのよね」
 痛風に対してはだ。
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