Development
第三十三話 蠢く思惑
[6/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
とが、姉のことが好きであるということを自覚していても、なお避け続けるという態度をとったことは彼女なりに思うところがあるのだろう。
「……西園寺さんが行方不明になったときに、お姉ちゃんが今までに見たことないくらい取り乱していたんです。いつも冷静で、どんなことがあっても飄々と対応してきたお姉ちゃんが、です。それを見て、あぁやっぱり西園寺さんは特別で、私はそこにいないのかな、と思ったら……。だから、自分の力で認めさせるって決めて」
「でも、今まで通りでは楯無さんが手助けしてしまうと?」
「はい、それでは意味がないと思ったんです」
一人でなければ意味がない、そう思っていた簪さんにとっては苦渋の対応だったんだろう。いや、もしかしたら一時は本当に楯無さんのことを憎んだのかもしれない。妹ではなく、僕を選んだように見えた楯無さんに。
どちらにしろ、良かったはずの姉妹の仲がこじれてしまった原因の一端は僕にあった。僕にその自覚はなかったにしろ、その事実を突きつけられるのは辛い。
「あ、あの。でもそれは私の勝手な思い込みでした。お姉ちゃんとも……すぐにはちょっと気まずいですけど、ちゃんと話します。だから……まだお姉ちゃんには内緒にしててください」
僕の内心を察したのか、簪さんが慌てて言葉を付け足す。
まだ顔は赤いけど、真っ直ぐとこちらを見る瞳は確かな決意を持っていた。これならもう、彼女が思考の袋小路に迷い込んで、また塞ぎ込むようなことにはならないだろう。
「はぁ、では私は姉妹喧嘩に巻き込まれたんですね」
そう、またちょっと意地悪く言うと簪さんは再び顔を真っ赤にしながら申し訳なさそうな顔になってしまった。なんていうか、話を聞けば本当にただの仲の良い姉妹の初めての喧嘩に意図せず巻き込まれただけなんだから……今まで気を揉んでいた分ちょっとくらいはいいよね。
「あ〜、かんちゃんだ〜! あれ? しののん先輩も一緒だね〜」
「ほ、本音……?」
そのとき、間延びしたような声が室内に響き渡る。
確認するまでもなく、この声は本音さんだ。たしか、彼女は簪さんの専属メイドと聞いていたけど、簪さんの反応に違和感を感じる。
「ど、どうしてここに?」
「えっとね、かんちゃんがここで作業してるって聞いて手伝いにきたの〜」
「そ、そう。でももう終わったから……」
「あら、まだ武装の最終起動チェックが残っているのでは?」
まるで何かを避けるように急ぐ簪さんに対して、僕は思わず残っている作業のことを口にしてしまった。
それを聞いた彼女は苦々しげに僕へと視線を送る。
直後、僕は先ほど口に出した言葉を心底後悔することになる。
「あ〜、それじゃ私も手伝うね〜」
そう言いながら、彼女はトンカチとドリルを手に持
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ