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月への航路
1話
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[9] 最初
「一緒に行かない?」
イマコさんは誘ってきた。僕は彼女が大好きだったから、一緒に行く事にした。

 さっきまでいた山が小さくなっていた。透明な月明かりの中をイマコさんと並んでのぼっていく。
「私帰るの」
イマコさんがぽつりと呟いた。
「そうなんだ。」
僕もぽつりと答える。しんとしている。夜空ってこんなに静かだったんだ。階段を上る音以外何も聞こえない。階段はガラスで出来ているみたいで、かつんかつんと二人の足音だけが聞こえる。もう何段のぼったんだろう。1000だんは超えたかもしれない。上を眺めてみると月が光光と輝いている。この光はどのぐらい前の光なんだろう。月までの距離は384400km。単純に計算すると約一秒前の光。太陽の光が月に反射して届いてくる。でも、その光は太陽のように猛々しくなくて、柔らかい光。熱も感じない。
「着いたら何をするの?」
僕はイマコさんに尋ねた。
「コーヒーをのむよ。あなたもどう?」
「いただくよ」
月にコーヒーってあったんだ。月のコーヒーってどんな味がするんだろう。やっぱり苦いのかな?
「どんなコーヒー?」
「ふつうのよ」
普通らしい。

 歩き始めてどのくらい行ったっただろうか?時間の感覚がない。ふと時計をみる。時刻は11:11。家を出たのが11時過ぎだったから。ほとんど時間が経っていない。
「時計なんか見ても意味ないよ」
「え?」
「時間は止まっているの」
時間が止まっているらしい。これで心配の一つは解消された。明日の事は考えなくていいみたい。そんな事を考えているとイマコさんが言った。
「さて、着いたよ」
着いたと言われてもまだ月へは全然届いていなかった。でも確かに階段はそこまでしかなかった。
[9] 最初


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