十三章 幕間劇
闇夜×褒美
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身はご主人様のものですから、命じられれば・・・・」
「俺は絶対に命じないな」
「・・・・ご主人様」
黙っちゃったけど、まあいいとして。仕上げとして紙やすりをだして磨いていく。
「よし、こんなもんかな。どうかな?」
「これは・・・・自分でしょうか?」
手渡された木彫りを眺める小波。これでもよくできてる方だけど。
「うん。上手く彫れてよかったけど」
笑っている小波を想像して作ってみたんだけど。
「・・・・自分はこのような顔をして笑っているのでしょうか?」
「これは俺の想像だ。嬉しい事があった時はこんな風に笑っているのかな?とな」
「・・・・」
「俺はいつか、小波の笑顔が見たいのさ」
「ご主人様は、自分に、笑え・・・・と仰るのですか?」
「何か可笑しい事でも言ったかな?」
「心凍らすのが草。泣くな、笑うなと言われて育ちましたので」
「相変わらず厳しい環境で育ってきたんだな。でもここは戦ではない。たまには、自然と笑みを浮かべてほしいと思っている。気持ちを素直に出せばよいのさ」
黙ってしまったな。何を考えているのだろうか。
「(出来ない。ご主人様への気持ちを素直に出してしまったら・・・・)ご主人様の命令なら、努力は、その・・・・してみます」
「努力はしてみろ」
一歩ずつだけど、それしかないな。
「ご主人様より賜りし褒美の品、小波、終生大切に致します」
木彫りを恭しく懐にしまい、深々と頭を下げる小波。
「余り大したもんではないけどな」
「そ、それでは・・・・その、失礼します」
再び一礼すると、小波はまるで逃げ出すかのように背を向けた。
「明日の夕食の事は忘れるなよー」
あっという間に闇の中に消えていく小波の背中に声を投げる。
「畏まりましたー」
声が遠ざかっているが、聞こえていたようだ。命令ではないけど、これから徐々に慣れさせれば命令じゃなくて自然になると思う。さてと地上の散歩を終えたら、今度は空での散歩でもしようかな。
一方小波はと言うと。
「あの方はいとも容易く、人の心に忍び込む。自分などより遥かに腕利きの忍びだ」
風を切り、闇を抜け、振り払うように私は走る。
「ああ、惑うな小波!弁えよ小波!あの方は大名の恋人であり、名だたる武将の恋人・・・・それに引き替え、自分はただの草、想いを募らせてよい相手ではないのだ。少しばかり優しくされたからといって勘違いするな。それはあの方の大らかな御心によるものに過ぎないのだから。そして自分は一真隊の一員である前に、松平家の家臣。泣くな!笑うな!心凍らせ、ただ任務を遂行せよ!」
なのに・・・・。懐にことりと揺れる温もり一つ。私は褒美の
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