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英雄王の再来
第7騎 クッカシャヴィー河追悼戦
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ある。

「エル様・・・」
良く聞いた声が聞こえて、私は振り向いた。多くの諸将が集まる中、一際身体の大きな男が、本陣へと姿を現した。初老と言えるその人の顔は、血と汗で汚れている。しかし、それでもなお、その眼は“大元帥”たる力ある光を放っていた。右腕を赤く染まる包帯で覆い、震わせているにも関わらず。

「ヴァデンス!大丈夫か?その傷は、どうなのだ?血が滲んでいるではないか。衛生兵を呼べ!早く!」
私は、彼の姿に少しばかり混乱していたのかもしれない。矢継ぎ早に、そんな事を口にして、その当の本人に苦笑されてしまった。

「はは、大丈夫でございますよ、エル様。そんなに慌てなさるな。このヴァデンス、かように簡単には死にませぬ・・・。」
この声を聞いた時、私は安堵した。いつもの、彼だと。しかし、彼はその言葉を吐いた後、崩れ落ちるように膝を付き、私に頭を垂れた。

「エル様、申し訳ございませぬ・・・真に、申し訳ございませぬ!」

「・・ヴァデンス。」
ふと、気付いて周りを見ると、ノイエルンが率いてきた兵たちが皆、頭を垂れていた。その首筋を私に向け、地面に擦れんばかりに下げて。この場に立っていたのは、私と私が連れてきた5人の士騎長だけである。

「ノイエルン様を守る事叶わず、不肖の身である我らが生き恥をさらす事と・・・なりました。守るべき御人を守れず・・・“盾”であるはずの我らが残るなど、愚の骨頂・・・真に、真に・・・・」
その続きを、ヴァデンスは言えなかった。肩を震わせ、拳を血が滲むほどに握りしめている。戦場の雄である彼が、こんなに“肩を震わせる”所を見た事がない。よく見れば、他の者も肩を震わせ、すすり泣く声が聞こえる。静寂が張り詰めるこの場は、戦場で雄足らん強者共がすすり泣く声で包まれていた。それは、ノイエルンにとって、鎮魂歌となるものではなかったか。私は、そう思った。視界を滲ませ、胸を熱くしてそう、思った。

「エル様・・我々は、いかような処分も受ける覚悟は出来ております。ご処断くださいませ・・。」
私は、その言葉に抑えていた気持ちを抑えられなくなった。涙が頬を一筋、また一筋と伝い、汗と血に汚れた甲冑を濡らした。頬を熱く感じ、手を目に当てる。手の甲で、涙を拭い、彼らに問い掛ける。

「そなたらに問う。ノイエルン王太子は、そなたらを“盾”として扱ったか?・・・答えは、否であろう!彼は・・兄は、そなたらを“剣”として信頼したのではないか!?違うか?ヴァデンス!」

「・・・左様に、御座います。」
そう言って、彼は、彼らは、大声を挙げて泣き出した。普段であれば、男児たるもの、声を挙げてなくなど許されることではないだろう。しかし、アイナェル神でさえ、この時ばかりは許して下さる筈だ。

 この日、チェルバエニア皇国軍と、アト
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