第7騎 クッカシャヴィー河追悼戦
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きかかって少しばかりの時間が経った頃、堅固な指揮に定評があるウルティモア将軍も、それを抑えきれずにいた。奇襲を掛けた一陣は、辛辣であったのだ。数で劣るエルの騎兵は短い時間での攻撃、つまり、その速さと突撃力で、チェルバエニア皇国軍の混乱を誘ったのである。それに加えて、その騎兵達は、通常の軍隊よりも多くの旗を掲げていた。これは、味方に援軍が来たことを印象付けさせ、士気を高める為だ。チェルバエニア皇国軍の正面いるアトゥス王国軍と呼応し、2方面から攻撃する。彼らの動きの一つ一つに勝つための、策が込められているのである。
チェルバエニア皇国軍陣営
将軍 ケルト・ウルティモア
自らが率いる自陣で、にわかにざわめきが起こった。右翼を突破して、こちらに食い掛かっていたエルの騎兵が、ウルティモア将軍の本陣まで迫ってきたのである。
「ちっ!何て奴らだよ、ほんとに。」
そう、愚痴を零した瞬間である。一人の敵兵が、味方の兵を掻き散らし、血飛沫とそれに斬られた腕や、首を吹き飛ばしながら、こちらにとてつもないスピードで突っ込んできたのである。その敵兵は、真紅の甲冑を身に着け、それが元々の色なのか、それとも返り血なのか分からないほど、“死”を撒き散らしていた。一瞬の間、その者と目が合った。脳が、その顔を認識出来る間もなく、“死”が降りかかってきたのである。刹那、自分とその真紅の甲冑を纏う敵との間に火花が飛び散った。咄嗟に、大剣を振り上げ、敵の攻撃から身を守ったのだ。
「これは、お力がある方とお見受けする。是非、手合わせを!」
そう言って、“真紅の騎士”は馬を引いて、距離を取った。顔を見た限り、私と同年齢くらいだろうか。槍を抱え、いつでも攻撃できる態勢を取っている。一分の隙もないその風姿は、恐怖すら覚えかねない。
「・・・断った所で、意味はないかな?」
「よく御存知で!」
その言葉を皮切りに、お互いが相手に飛び掛かる。傾く夕日に、彼の持つ槍の刃先も赤く煌めかせて、襲い掛かってくる。それを、大剣の腹で弾き、下から斬り上げるように振り抜く。しかし、彼は、彼の乗る馬を身体の一部のように軽やかに躱し、槍を回転させ、剣を振り抜いて開いた脇腹を突いてくる。身体を捻り、咄嗟に避けるが、避けきれずに甲冑に亀裂が走った。それに負けじと、身体を捻った勢いのままに大剣を横に薙ぎ払い、相手に叩きつける。彼は、槍を突いた体勢であった為に、避ける動作がにわかに遅れた。叩き付けた私の大剣は、“真紅の騎士”の肩に当たり、甲冑を弾く。お互いの実力は拮抗している。剣と槍を右に振り、左に突き刺し、20合と打ち合っても決着は着かない。お互いの獲物が相手に当たるも、その傷は浅いのだ。肩で息をし、汗が溢れだしても、お互いとお互いの間で火花を散らした。
もはや、何合と打ち合っ
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