第7騎 クッカシャヴィー河追悼戦
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、往復の。ノイエルン王太子が戦死されたのはご存知かと思いますが、それの援軍の為に、彼は急ぎ、クッカシャヴィー河に向かったのです。そして・・その際に、決定的な“溝”を作ったのですよ。」
「・・・“溝”?」
総督は、将軍が食い付いたと見るや、いつしか将軍が“油を塗ったように滑る口”と評したように、言い捲り、説明した。
アトゥス王国王位継承権第2位のヒュエル・シュトラディールと、第3位エル・シュトラディールとの間に、“決裂”と言える“溝”が出来たのだ。清浄な王家が存在し得ないこの地上では、王族同士の“決裂”は常時である。人が生きる為に“水を飲む”ように、当たり前に起こる。彼らの“決裂”も、その例に漏れない。凡人の兄と、優秀な弟、どうなるかは、火を見るよりも明らかだ。そしてそれは、“トルティヤ平原”において、弟であるエル・シュトラディールが、その才能の片燐を見せた事で、激しく燃え上がらせた。羨望と憧憬、嫉妬の想いは、憎悪と悔恨に変わり、ヒュセル・シュトラディールは敵国に弟を売ったのだ。
「それは、信じるに値する情報なのかしら?」
シャプール砦での一件を含めて説明を聞いた将軍は、そう答えた。
「無論で御座います。私は、全ての事柄をこの目で見ておりました。それに、ヒュセルの異様な態度は常軌を逸しており、策略が出来るような人間ではありません。エルも、ヒュセルを落ち着かせる為にそのようなものを渡したのでしょうが、これが命取りと成りましたな。」
「ふむ、あながち嘘でもなさそうね。」
「では、お許し頂けますか?」
希望に見せられた眼は、眩く輝きを見せる。失態に足りるかはどうとしても、“手土産”を持って来たには違いない。将軍も、先ほどまでの異様な雰囲気もなく、「事は好転している」、そう思えた。
「まだよ。エル・シュトラディールの首を私に届ける事が出来たなら、その罪、免除してあげましょう。」
「さ、左様で御座いますか?!この不肖の身、身命を賭して励みまする。」
総督が、そう答えたその時だ。将軍に“悪魔”が乗り移る。情を情と思わず、人の苦しみや悲しみを餌とする“悪魔”。
「・・・ま、そうでなければ、こうなるだけよ。」
将軍はそう言って、手に持っていた透明な筒を総督の前に放り投げた。その筒は、地面へと吸い込まれるように落ち、音立てて割れる。中から緑色の液体が零れだし、重く丸いものがそこから顔を覗かせた。それを見た皆は、眼を逸らし、目の前に落ちてきた総督は、悲鳴を上げた。
「ひっ・・・!?」
希望に輝いた顔は、絶望と恐怖に取って変わり、蒼白となる。その筒に入っていたものは、“人の首”だ。それも、我々が良く知る人物の。空虚の眼が総督を恨めしそうに見つめている。何も言わぬその顔が、無念だと訴え掛けるように。その光景に、将軍
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