第7騎 クッカシャヴィー河追悼戦
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ゥス王国軍とのクッカシャヴィー河を血と汗、憎悪と悲愴に染め上げた戦闘は、後世、“クッカシャヴィー河追悼戦”と呼ばれる。これのきっかけとなった“ノイエルン王太子の死”を追悼した戦として。アトゥス王国に大きな転換点を与える悲劇であるが、その悲劇は、多くの人間に宿っていた光を打ち消すものであったのだ。
「え、エル様!大変です!」
そんな騒がしい声で起こされたのは、ヴァデンス達と泣き明かした次の日の朝である。急くようにジムエルに案内されたのは、一つの大きなテントだ。その中は、無念と悔恨、慙愧の想いで充満していた。部屋の中央に、昨日の夜と同じように頭を垂れるヴァデンスが居た。
ただ、昨日と違うのは、彼は頭を完全に地面につけ、胡坐をかいて座っている事と、彼が座る地面に赤い液体が池を作っている事である。その光景が目に入った瞬間に、私は全てを悟った。あぁ、ヴァデンス・ガルフは、自ら死んだのだと。彼が持つ思いは、私が思うほど軽いものなどではなかったのだ。あのような言葉で、自分を許せる人間などではなかったのだと。私は、許せなかった。まだまだ、甘い自分自身に。そして、“死”を持って罪を償おうとしたヴァデンスにも、同じ思いを抱いた。一瞬の静寂を置いて、私は呟いた。どちらに向かって呟いたのか、自分でも分からないその言葉を。
「この、馬鹿者が。」
第7騎 クッカシャヴィー河追悼戦 完
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