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魔王の友を持つ魔王
§56 矜持と家族
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ただけだ。

「分身するか!」

 男の視界に写る無数の毛は全てが孫悟空の姿を形とる。分身の術で分身。そこで、更に変化。

「お前は、楽に殺さない」

 宣言するのは元の姿に戻った黎斗。分身体が変化した存在、つまりは黎斗が今まで会った神や神殺し達――もっとも黎斗が化けているだけなのだが――が一斉に男に牙をむく。

「今のままだとスーリヤとシャマシュになった僕が暴れられないからな」

 ツクヨミの権能で超加速した黎斗は刹那の間に男の背後に回り込む。右腕に宿すのは神殺しの焔。

「定義”男”。定義”太陽を隠す力”。分断せよ」

 言霊と共に焔を放つ。男に焔が当たる頃には、黎斗は元の位置に戻る。そこでちょうど時間切れ。

「ぐおぉ……!!」

 焼かれる痛みによる絶叫を合図に、夜が明けていく。光が差し込み、世界が光を取り戻す。そこからは、一方的だった。

 鎖が男を拘束し、木々が男を絞殺しにかかる。男の身体が金属化し始め、それが瞬時に熔解する。しかし、それだけでは終わらない。

「言の葉を聞け。万物に耳を傾けよ。路傍の石こそ叡智の鍵」

 男の頭を掴んで、カイムの権能を発動。男に与えるのはあらゆる生命と意思疎通を可能にする力。黎斗が普段使っている力だ。これを、手加減せずに、叩きこむ。

「ああああああああああああ!!!」

 木々のざわめきが。雑草のゆらめきが。虫の鳴き声が。鳥達の羽ばたきが。宙を漂う細菌の一つ一つの感情が。都市一つ分はゆうにあるであろう範囲の情報が――――男の脳内に流れ込む。耳を塞いでも流れてくる数多の意識は洪水となり、男の精神を破滅へ導く。

「如何に神と言えど、この大量の情報を前に自我を保てるものかよ」

 最初この力に目覚めた時、黎斗は意識を失った。それほどの情報量。殺神的な量の会話ログを一気に流すことで相手の精神に攻撃することこそカイムの権能の真骨頂。耐え切ったとしてもその後ひたすら聞こえてくる声に集中力を乱され、頭痛を引き起こされ、洞察力も低下する。須佐之男命をして「ロクな能力じゃねぇ」と言わしめる悪魔の権能、それが繋がる意思(リンク・ザ・ウィル)

「こんなもんか」

 黎斗の視線の先には、どろどろに熔けきった像、否、男だったもののなれの果て(・・・・・)
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