§56 矜持と家族
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道具も何もなく。
「腑に落ちない顔をしているな」
そういう少年の風貌は、美青年から青白い顔をした男へと変貌を遂げている。
「まぁね」
威力と範囲に特化しているこの権能を簡単に打ち消すことは容易ではない。そして、もう破壊光線は撃てない。これが容姿が変わる程度の代償とは思えない。もし仮にあるとすれば――――
「試してみるか」
呟き、二郎真君の権能を発動。変化対象は草薙護堂。月に七十二回、既知の存在に変貌する権能。
「これまた、俺と同種の力か」
そう言った男は姿を変える。凶暴な牙を研ぐ狼に。闇夜を悠然と飛ぶコウモリに。
「我が元に来たれ、勝利のために。不死の太陽よ、我が為に輝ける駿馬を遣わし給え!」
白馬が使える筈、という確信の下で変化したが、予想通り白馬が使えた。これを無効化するかどうか、だ。
「ほぅ、芸の細かい男だ。だが無駄だよ」
不敵に笑う男の前で、再び太陽が掻き消える。
「今度は、こっちの番だ」
人に戻った彼が指を鳴らすと同時に四方から襲いくる犬の群れ。
「我は無知なる闇の神!!」
邪気が、噴出する。飛びかかってくる犬は悉く命を奪われ消滅する。そのまま、邪気を相手の方へ噴出する。
「じゃあ、こっちも」
嗤う男の手に、瘴気が集う。そのまま、邪気と衝突。大気を歪めて、弾け飛ぶ。
「それで終わりじゃ、ないんだろ?」
鼠の群れが、蝙蝠の群れが、馬鹿馬鹿しい数で襲来する。
「喰らえ」
それに対するのは紫電を纏った八匹の龍。数こそ圧倒的に少ないが、その実力差は数を補って余りある。
「大体わかった。お前の出自がなんだろうが関係ない、次で、潰す」
これほどまでに強気な発言になるのは久しぶりだ。
「あはははは、ホントに潰せんの?」
嘲笑してくる男に返す言葉として選ぶのは、先程言い負かされたこと。これだけは言わねば、気が済まない。
「さっき」
「?」
「家族ごっこ、と言ったな。実際そうなんだろうさ。義父さんも、義母さんも。義妹も。だけど」
確かに、現世での行動に支障が出るから、適当に選んだ、といっても過言ではない。偽りの関係だ。
「こっちが仕組んだとはいえ、あっちは僕を”息子”として認識してくれているんだよ」
赤の他人との数日程度の家族ごっこに感情移入するとは。甘ちゃんになったものだ、などと苦笑しつつ。
「だから、せめて。……長男としての責任を果たす。義妹を傷つけさせは、しない」
本当の家族とは別れたきり。携帯電話内部の写真頼み。黎斗にとって家族と呼べるのは須佐之男命達やエ
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