Episode26:敗北と事の終わり
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人の意識がある場合は隼人の意思でのみ、隼人に意識がなければ、自己に害が迫れば勝手に発動すること。そして、空間に歪が生まれてそこに対象が消えていくということだけだ。
なぜ、無意識下で発動するのか、また、消された対象はどこに消されたのか、歪はどこに繋がっているのか、など大部分のことが本人でさえも分かっていない。
通常ならば、この異能は秘匿されるべき能力なのだが、隼人の無意識下で発動してしまうことから完全な隠蔽は無理だと結論づけてきた。しかし、それでも今までは隠し通せてきた。
そう、今、この瞬間までは。
スバルの纏う空気が、更に険しくなった。
「…もう隠し通せないから教えるわ。それは隼人の魔法、消失よ。仕組み、無意識下での発動条件、ほぼ全てが謎の、魔法とは呼べない魔法。一応言っておくと、消失は分解でも腐敗でもないわ。正真正銘、存在そのものをどこかへと消される」
スバルの言葉に、克人は表情を険しくした。常であれば他人に恐怖を覚えさせかねないほどの表情だったが、それでスバルの心に波風が立つわけではない。
どこから取り出したのか、刃渡り20cm程のダガーが克人の首筋に添えられていた。
「無駄な抵抗は諦めなさい。この密接した距離じゃあ、アンタの魔法が発動するより私が首を切り裂くほうが早い」
例え、克人が万全な状態でもスバルは克人を下すことはできただろう。だが、それでは克人に無駄な怪我を負わせることになってしまう。なるべくなら戦わないように、それがスバルなりの優しさだった。
だがまあ、克人には最初から抵抗する気などなかったようだが。
「アンタら十師族が隼人を玩具にしようとしているのは聞いてるわ。具体的になにをしようかなんて知らないし知りたくもないけど…そうね、もしアンタが消失のことを四葉なんかに言ってみなさい……その喉掻っ切る程度じゃ済まないわよ」
スバルが今日ここに来たのは、このことの牽制も含めてだった。
克人が束ねる十文字家も席を連ねている十師族。日本における魔法組織の最上位に位置するそれが、隼人の存在に目をつけているというのは少し前にスバルの個人的なツテで知っていた。
勿論、それを聞いて隼人の守護を請け負っているスバルが黙っているはずもなく。
今、彼女はかつての後輩に刃を突き付けているのだった。
「…安心してください。俺は、九十九のことを誰にも言うつもりはありません」
バチリ、と克人とスバルの視線が交錯した。スバルは克人の真意を計るため、克人は信頼させるために二人はしばらく睨み合っていた。
しばらくして、スバルの溜息が漏れた。
「…分かったわ。今はアンタを信じましょう。けど、もし隼人の情報がバレていると分かったら、一切の容赦もせずにアンタを殺すわ」
「了解しました
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